なでしこジャパンに“氷河期”が襲来するかもしれない赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2016年03月17日 08時11分 公開
[臼北信行ITmedia]

チーム再建にはイバラの道が待っている

 世代交代を図れなかったとして佐々木監督の手腕を責める声も出ているが、現場のトップに責任を押し付けるのは余りにも乱暴だ。やはり、こうしたチームの内部分裂を引き起こした最大の要因は、結果を出した功労者だからとただ闇雲に佐々木監督にこだわり続け、その長期政権の歪(ひずみ)による「なでしこ内部分裂」の発生を想定できず、指揮官を筆頭としたチームスタッフ、そして選手とすべての面において後進育成を怠っていたサッカー協会の舵取り不足にあるといえる。実際に“ポスト佐々木”や“ポスト澤”として誰もが認めるような人材は、まだ1人も現れていないのが現状なのだ。

 佐々木監督の去就に関して言えば、勇退か続投かで揺れ動いたロンドン五輪終了直後だけではなく実は昨年秋にも交代のタイミングがあった。昨年のFIFA女子ワールドカップで準優勝を遂げた直後、佐々木監督は勇退することを決め、代わってU-18女子日本代表監督の高倉麻子氏にバトンを受け渡す方向性でまとまりつつあったのだ。

 ところが、日本サッカー協会はこのプランを見送り、昨年10月14日に次のリオ五輪女子アジア予選の指揮も同監督に任せ、引き続き佐々木体制で行くことを発表した。佐々木監督は9月の時点で一度代表監督の職を退いていたことから結局、協会側の要請を受けてわずか1カ月ほどで“再復帰”した格好となったのである。

 どうして協会側は高倉氏の代表監督就任を見送ったのか。情報を整理すると、それはリオ五輪最終予選で出場権を逃してしまった時のことを考え、高倉氏が世間から集中砲火を浴びせられ、辞任に追い込まれる可能性を危惧したことが一番大きいようだ。

 U-17サッカー女子日本代表の監督としてチームを2014 FIFA U-17女子ワールドカップで初優勝に導くなど輝かしい経歴を持つ高倉氏は、今の日本女子サッカー界において「最後の砦(とりで)」とも言うべき有能なユース指導者。その逸材をわずか数カ月の短命政権で終わらせてしまうような事態になってしまったら、元も子もない。協会幹部たちは、そのように結論付けたという。とても短絡的で先々を考えたプランニングとは思えない。

 その高倉氏は佐々木監督の退任を受けて再び、なでしこ後任監督への就任が有力となっている。しかしながらチーム再建にはイバラの道が待っているのは明白だ。今回の五輪出場消滅によって多くのベテラン組が代表選手からの引退を表明。それによってチーム内の対立も大きく緩和されることになるだろうが、経験豊富なベテラン組の不在によってチームは一気に大幅な戦力ダウンも強いられることになる。世代交代が円滑に進んでいなかったチーム状態のまま若手主体に切り替え、果たして結果が残せるのかという疑問符は残念ながら消えない。

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