こうした潮流を、私たちはどう理解すればいいのか。シーワールド側は今回の発表を受け、公式Webサイトにこう声明を発表している(参照リンク)。「社会が昔とは変わってきている。私たちもそれに伴って変わっていく」。
この“社会”変化が何を指すのかははっきりと分からないが、文脈から読むと、多くの米国人がシャチを飼育すべきではないと思うようになったということのようだ。だが実際はそれだけではないだろう。インターネットやSNSの普及という“社会”変化よって、声の大きい動物愛護団体の発言力がますます高まり、妨害活動がより効果的・破壊的なったということも含まれているのではないか。
現在ではもはや、ビジネスの成功や利益を追求するためには、コンプライアンスやポリティカル・コレクトネス(偏った用語を追放し中立的な表現を使用しようという運動)といった“倫理”を重視した方向転換はやむなしだと言える。そしてその“倫理”の中で、動物愛護団体らの声がますます大きくなっているということだろう。日本企業もこの事実を肝に銘じておいたほうがいいのかもしれない。
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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