社員以上の愛社精神を持つ、ヤッホーファンが流した涙のわけ「よなよなエール」流 ガチンコ経営(1/4 ページ)

» 2016年04月05日 08時00分 公開
[井手直行ITmedia]

 ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」をはじめとするエールビールを飲んでくれるお客さん(ファン)が喜んでくれる活動を以前から熱心に行っています。

 例えば、ネット上では、私が仮装をして参加する驚きの授賞式レポート、ビールを題材にした面白い写真をファンから募るフォトコンテスト、私たちの姿をライブ配信しながら行うオンライン飲み会など。リアルの場では、ファンを集めての面白コンテンツ満載の飲み会イベント、実際にビールを造っている現場を間近で見られる醸造所見学ツアーなどを実施しています。

数多くのファンたちと「よなよなエール」でつながっている 数多くのファンたちと「よなよなエール」でつながっている

 ほとんどが売り上げに直接つながらないような活動です。しかし、大手メーカーがやれないような個性を振り切った企画やファンとのかかわりが非常に濃い活動ばかりです。これらの活動は、その昔販売店にビールを扱ってもらえない不遇の時代があったことで、ファンに喜んでもらうことがただただ嬉しく、そこから始めたものです。

 結果的にはこれらの活動はファンとの信頼関係を中・長期的に構築し、ファンの圧倒的支持を得る重要な活動となったのでした。11年連続で増収増益という状況をもたらした大きな要因の1つとも言えるでしょう。前回に引き続き、そんなファンとの絆を表すエピソードを紹介します。

皆さんのお手伝いをしたい!

 読者の多くは企業にお勤めでしょうが、皆さんはこんな方にお会いしたことありますか? 実際働いている社員と同じように、いやそれ以上に、その会社のことや、つくっている製品を愛しているファンを。

 「そもそもそんなファンなんているの?」と思っている方もいるのではないでしょうか。実はそんな信じられないファンがヤッホーブルーイングにはいるのです。

 2010年ごろになると、私たちなりにファンに喜んでもらうイベントを年に数回開催するようになっていました。そのイベントの内容は、50〜100人ほどのファンと一緒にビールを飲みながら、ビールの銘柄当てクイズや、よなよなエールおよびヤッホーブルーイングのことをネタにしたウルトラクイズ大会など、ファン同士も仲良くなり、かつ盛り上がる企画を実施するというものです。

2010年に都内のパブで行われたファンイベント 2010年に都内のパブで行われたファンイベント

 参加者の満足度は非常に高く、私たちはこういうイベントが、ファンがよなよなエールをもっと好きになる重要な施策であることを実感していました。収支的には赤字のイベントですが、社会に何かしら貢献できている意義もあることが大きな魅力と考えていました。

 2011年、ファン向けに新製品発表会を東京で行なったときの話です。いつものイベント以上の盛り上がりに私たちは興奮し、新製品の手応えを感じながら、後日行うマスコミ向けの新製品発表会へ期待を膨らませていました。

 すると、よくイベントに顔を出してくれるファンの女性(ニックネームは「ゆみえさん」です)が近寄って来て、「今度のマスコミ向けの発表会もとても興味があります。スタッフの一人として手伝うので参加させてもらえませんか?」とお願いしてきました。気持ちはとても嬉しいし、イベントを手伝ってくれるというのは本当に助かるのですが、さすがに大切なファンに手伝いをさせるのは申し訳ないし、準備はかなり大変です。

 そのことでよなよなエールに対するファン度が下がってしまったら困ると思い、その気持ちを正直に伝え、やんわりとお断りしました。しかし、ゆみえさんは、そんなこと気にしなくていいのでぜひ手伝いたい、もちろん無報酬でやるし、絶対に迷惑はかけない、とまで主張されたので、そこまで言ってくれるのであればと、ありがたくお願いすることにしました。

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