今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
2016年3月30日、ミャンマーで半世紀ぶりに新政権が発足して、世界中で大きな話題になった。
民主活動家のアウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)が2015年11月に総選挙で圧勝したことで、これまでミャンマーを支配してきた軍事独裁政権とその後に続いた元軍人らによる政権が引導を渡された形となった。そして今回、まだ軍部の影響力を維持したい国軍とスーチーのたび重なる協議を経て、晴れてNLDの文民政権が誕生することとなった。
スーチーは外相、大統領府相、大統領報道官の要職を兼務し、さらに与党NLDは党首のスーチーを新設の「国家顧問」に据える法案を提出している。文民政権の発足は国民にとっても素晴らしいニュースであり、内外から新政権への期待は大きい。
ただここにきて、スーチーを非難する声があがっている。もともと彼女に対して批判的な見方をしている人たちは少なくなかったが、今ほど不満が目立ってきたことはないと言える。一般的には、ミャンマーにとっての“救世主”だと見られている彼女に何が起きているのか。
最近、インドに暮らす友人のインド人ジャーナリストとやり取りしている際に、こんなことを聞かれた。
「アウンサンスーチーは人種差別主義者なのか?」
イスラム教徒でもあるこのジャーナリストは、ミャンマーに取材で訪れたり、知り合いも少なからずいる著者に対して、スーチーのイメージなどを聞きたいと言う。もちろんスーチー政権発足というニュースが話題になっていることもあるが、彼が今回スーチーに興味をもった最大の理由は、世界的に一部のイスラム教徒の間で、ある署名活動が話題になっているからだ。
その署名運動とは、「スーチーのノーベル平和賞を剥奪しろ」というキャンペーンだ。
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