規模を追わないことがシャープの経営理念であるのに対して、鴻海の成長は、規模の追求で成し得てきたものだ。米アップルのスマートフォン端末「iPhone」の製造受託を背景に、世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)へと成長。現在の売上高は約15兆円。130万人の従業員を抱える企業規模を誇る。まさに「規模」こそが、鴻海の代名詞だ。
今後、郭会長兼CEOが、シャープの経営に口を出してくることは明らかだろう。
4月5日に発表された人事では、シャープ出身とはいえ、鴻海が2012年に出資している、堺ディスプレイプロダクトで代表取締役会長を務めていた野村勝明氏を、4月6日付けでシャープの副社長に抜擢。また、同社長の桶谷大亥氏もシャープのディスプレイデバイスカンパニー社長とした。これも、郭会長兼CEOによる人事と見られている。
規模を追わないシャープと、規模を追求する鴻海の基本姿勢の違いは、まさに「水と油」の関係。今後、郭会長兼CEOが、シャープの経営に深く介入し、鴻海流の規模を追求する手法が導入されれば、過去100年のシャープの栄枯盛衰の歴史でも証明されるように、シャープが衰退局面に入るのは間違いないだろう。
それとも、郭会長兼CEOは、水を油に変えようと考えているのだろうか。
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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