義援金やクラウドファンディングに参加した後、現地に成果を見に行く。こうした旅行動機に名前を付けるなら「寄付ツーリズム」だろうか。鉄道に限らず、自然を残したい、文化を残したいなど、さまざまな分野で成立しそうだ。
見返りを求めない少額の寄付で、思わぬ対応にうれしくなったこともある。
三重県の三岐鉄道三岐線丹生川駅そばに「貨物鉄道博物館」がある。今では貨車といえばコンテナだけど、ここには昔ながらの黒い貨車が保存展示されており懐かしい。ボランティア団体が運営しており、三岐鉄道社員のボランティアも参加して修復作業をしている。巨大貨車「シキ160」もあって、恐竜の骨のような車体に近寄れる。もちろん触れる。見学者が少ない時間だったせいか、砂利などを運搬するホッパ車の扉開閉も実演してくれた。
倉庫を改造したような展示館も資料が多く、それらも含めて、なんと入場無料だった。何だか申し訳ないと思っていたら、寄付募集の貼り紙を見つけた。少額で申し訳ないと思いつつ、ほかの博物館の入場料程度を募金した。後日、このボランティア博物館の公式サイトに私の名前が掲載されていた。このうれしさは募金した満足感とは違う。博物館と自分の間に、見えない糸がつながったような気がした。
同じ三岐鉄道北勢線の終点の阿下喜駅には軽便鉄道博物館がある。こちらはもっと小規模ながら、独自のレールを敷いてミニ列車を走らせている。こちらもボランティア組織の運営で、親子連れでにぎわっている。ここも見学料を取っていない。
ボランティア会のメンバーにバスファンの人がいて、動くコレクションとして路線バスを保有しており、他の路線の駅まで便乗させてくれた。そのバスの料金箱にお金を入れようとしたら、それは営業行為になって叱られるからダメだという。
そんな次第で、軽便鉄道博物館の募金箱にもバス代金相当の小銭を投げ入れた。名刺も渡さず、記名帳もなかったから、この金額は公式サイトに掲載されていない。でも私はこのときの「ありがとう」の言葉だけで満足しているし、今でもこのボランティアの動向は気にかけている。一方的だけど、私の心には思い出という絆がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング