JR北海道が断念した「ハイブリッド車体傾斜システム」に乗るまで死ねるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2016年05月06日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

ハイブリッド車体傾斜システム

 285系気動車が搭載したハイブリッド車体傾斜システムは、制御付き振り子方式と強制車体傾斜式の両方を搭載する。振り子方式では車体の傾きは6度が限界。そこに強制車体傾斜式を合わせて、さらに2度傾ける。合わせて8度の傾斜だ。振り子だけで8度傾けようとすれば、左右の揺れ幅が大きく乗り心地が悪い。強制車体傾斜式はエアサスペンションの上昇に限界があって、8度は不可能。

 ハイブリッド車体傾斜システムは、左右移動と上下移動の組み合わせで乗り心地を維持したまま、曲線区間の物理的限界速度にもっと近づける。乗り心地基準の曲線区間の制限速度が時速90キロメートルだとすると、振り子式はプラス30キロメートルまで上げられる。強制車体傾斜式は少し低くてプラス25キロメートルだ。そしてハイブリッド方式はプラス50キロメートル。

 つまり、時速90キロメートル制限のカーブを時速140キロメートルで通過できる。秋田新幹線や山形新幹線の在来線区間(ミニ新幹線)なみの速度を出せる。もちろん軌道の強化は必要だ。しかしミニ新幹線のように軌間を変更するような大工事は不要。函館〜札幌間だけではなく、札幌〜帯広〜釧路、札幌〜網走、札幌〜稚内など各方面をミニ新幹線化したも同然の効果を期待できた。

車体傾斜システムの変遷(出典:JR北海道プレスリリース) 車体傾斜システムの変遷(出典:JR北海道プレスリリース

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.