そうしたさまざまな事情が奇しくも揃って指し示す先がこのクラスのプレミアムモデルであるBセグメントSUVなのだ。各社のラインアップを見てみよう。なお、価格は千円単位四捨五入である。
それぞれベースになったクルマと車両価格を比べて見るとその差は少なくない。中にはCX-3のように、デミオで選べるガソリンエンジン・モデルがラインアップされず、デミオでは高価格グレードにあたるディーゼルエンジン・モデルしかないというケースもあり直接比較しにくいこともあるが、このクラスが利幅を上げることを目的としたクラスである以上、意図的に廉価モデルを排除しているともとれ、それも差額の内に含めていいだろう。
ベースモデルは背の低い5ドアハッチバック・ボディを持ち、従来からの小型車のイメージから抜け出せないのに対して、SUVモデルはどのクルマも明らかにデザイン優先のスタイリッシュなカタチで、明瞭な新しさがある。一言でいってしまえば貧乏臭くない。「小さいクルマには乗りたいが、あまりに貧乏臭いのは嫌だ」という層は一定数いる。筆者は個人的には曖昧な付加価値にお金を払うより、しっかりしたベーシックの方が好ましいと感じるタイプだが、恐らくそうでない人の方が比率としては多いのだろう。
ベース車両よりスタイリッシュなボディを纏(まと)わせて高価格で販売するというのは1970年代から続く由緒正しいスペシャルティカーの手法だ。当時の無理やりクーペにしてパッケージ効率を落としたボディに比べれば、運転席からの見晴らしも良くなり、荷室も広くなるなどメリットも多い。
ここから数年にわたって続く自動車産業の苦境において、果たしてこれらBセグメントSUVが救世主になるかどうか、慎重に見守っていきたい。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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