舛添知事の“お金”の使い方に、なぜ不満を感じるのか世界を読み解くニュース・サロン(2/6 ページ)

» 2016年05月19日 07時38分 公開
[山田敏弘ITmedia]

知事が出張で海外に行く理由

 米国でも、グローバル化が進むにつれ、知事が海外に出張することが増えている。ただ米国では、知事が海外に行くことに対する目はシビアである。というのも、知事の海外出張は、州に恩恵を与えるビジネスに絡んでいることが前提だと見られているからだ。

 ただそれゆえに出張の評価はしやすく、メディアがその成果などを報じることになる。例えば米国で最近評価の高い知事としては、テネシー州のビル・ハズラム知事がいる。

 テネシー州はもともと日本や韓国、中国といったアジア諸国の企業が多く進出している。その後押しをしてきたのが同州の歴代知事だ。現在のハズラム知事は2014年6月に日中韓を歴訪し、その成果として、日本だけでタイヤメーカーのブリヂストンが同州に2億3300万ドル規模(254億円:1ドル109円換算)の拠点を作ることに合意したと発表し、自動車部品メーカーのデンソーは同州内で8500万ドル(92億6000万円)の追加投資に合意、日産も部品部門で1億6000万ドル規模(174億円)のプロジェクトの立ち上げを発表している。

 もちろんこうした合意には事前の交渉などがあり、決してハズラムだけの手腕ではない。それでも日本に来日してこの3社の幹部と面談し、合意に向けた最終的な後押しをした。しかも当時の出張費用は、3カ国を回る1週間の旅で1万9000ドル(207万円)だった。それで数億ドルの投資と数多くの雇用が生まれるのだから、かなりのコストパフォーマンスだと言える。

 ちなみにテネシー州は前知事の時代から日本企業にアピールを続けており、今では183の日本企業が存在し、同州には177億ドル(1兆9285億円)の投資が行なわれて、5万人の雇用を地元で生んでいる。2013年には、海外投資による雇用創出が全米で1位になったという。

 こうした成果を出すのは、知事として当然のことではないだろうか。州を良くするから投票してほしいと頭をさげて選ばれたのだから、結果を出さないと有権者は納得しない。

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