新聞社が大統領候補の支持者を表明することは、メディアの「エンドースメント」と呼ばれる。このエンドースメント、実は非常に歴史が古い。例えば、1世紀以上前の1860年には、ニューヨークタイムズ紙が共和党の大統領候補だったエイブラハム・リンカーンに支持を表明している。そして現在までその伝統は続き、例えば2012年の大統領選挙では、全米から41の新聞が民主党のバラク・オバマ大統領を、35の新聞がミット・ロムニー共和党候補を支持すると表明した。
そんな古くから行なわれているエンドースメントだが、その慣例はもちろん、日々のニュースを報じる社内の「ニュース部門」の考え方と完全に相反する。新聞のニュース報道はとにかく「中立性」「バランス」が念頭に置かれ、それを逸脱することは、メディアとしての信頼度の失墜に直結する。当然、ほかのメディアからも厳しい指摘を受けることになる。
こう見ると、新聞には“支持表明”と“バランス報道”という矛盾が存在していることになる。これはどう理解すればいいのか。
エンドースメントは新聞社内の「編集委員会」が行っている。この編集委員会とは、完全にニュース部門とは隔絶されて存在している。候補者の支持、というような意見を表明するのは編集委員たちであり、バランスある偏見のない報道を目指しているニュース部門の記者や編集者、カメラマンなどではないのだ。
編集委員とニュース部門の間には“厚い壁”が存在し、両者が交わることはない。例えば2012年に読者からの質問に答えたニューヨークタイムズ紙のジル・エイブラムソン編集長(当時)は、大統領選の支持表明などをする自社の編集委員会について、「(ニュース部門の)編集長として、編集委員会と一切つながりはない」と内情を語っている。「彼らの記事(エディトリアル=社説・論説記事)は、私自身も読者の皆さんと同じように、紙面で初めて読むのです」
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