コミュニケーション能力を一方的プレゼン能力と勘違いしている人が圧倒的に多くいます。一方的に言いたいことをまくしたてるのはコミュニケーションでも何でもなく、また、「外国では自己主張するのが当然」などという人がいますが、自己主張だけで社会が受け入れてくれるとは到底考えられません。
私の少ない海外滞在経験や欧米だけでなく、アジアから南米、南アフリカまで世界中の人々とビジネスで接してきた限り、少なくともビジネストーク(商談)を一方的要求を突き付けるだけの人など会ったことがありません。逆に、地球の裏側ほども距離が離れている国の人や、日本とはあまり関係の良くない国情の人なのに、まるで遠い親戚のような親和感や価値観のつながりを感じた経験は山のようにあります。
つまり自分の言いたいこと、伝えたいことを言うのが面接ではないという、「採用の原理」を今一度考えて臨んでほしいのです。「手応えがあったのにダメ」なのではなく、「手応え」と思い込んでいたことが実は手応えではなかったのではと考えるべきです。
面接はプレゼンテストではありません。コミュニケーションの場です。自分の言いたいことより前に、まず「相手」の「聞きたいこと」を理解するのが先決です。これをすっ飛ばしていきなり自分のアピールをまくしたてて、それが成功したことに手応えを感じても、面接が成り立っていないのです。手応えを感じる部分を間違えているのです。
実際、面接で手応えを感じることはあります。しかしそれは言いたいことを言えたかどうかではなく、相手=採用側の関心のあることを面接中にしっかり理解でき、それに合致する意見や情報を出せたときです。まず「聞く」ことに成功しなければ、コミュニケーションは絶対に成り立ちません。
来週からの面接本番を迎え、プレゼン練習に余念がない方。それ自体は無駄ではありません。相手がそのプレゼン内容に関心があると確証を持てたなら、非常に有効な情報提供になります。しかしそうではないことに相手が関心を持っているなら、絶対に自分の言いたい欲望に負けることなく、必ず相手の希望に沿うのを優先しなければなりません。
面接練習に来る方には、特に新卒就活の学生であれば、いかに覚えてきたせりふをスラスラ言えるかと採用は全く関係がないことを説明しています。わざわざお金を払って面接練習まで来るような意欲のある人たちは、得てしてアピールが前面に出過ぎています。アピールそのものが良い悪い以前に、相手が聞きたいことをそっちのけで臨めば、どれだけ良いプレゼンでも意味がありません。
面接やESの質問・設問をきちんと理解せず、自分勝手に都合の良い情報を並べ立てる人は、むしろしっかり準備をしている人に多く見られます。これはコミュニケーションではありません。ぜひ、「聞くこと」をまず第一に心掛けて、面接に臨んでください。(増沢隆太)
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