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» 2016年06月03日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:寝台特急「北斗星」の食堂車が授かった新たな使命 (3/5)

[杉山淳一,ITmedia]

埼玉高速鉄道の代表からの一本の電話がきっかけ

 ピュアホームズと食堂車を結ぶきっかけは、埼玉高速鉄道だった。埼玉高速鉄道は東京都北区の赤羽岩淵駅と埼玉県さいたま市の浦和美園駅を結ぶ鉄道会社。埼玉県や川口市、さいたま市、東京メトロ、埼玉りそな銀行などが出資する第三セクターだ。赤羽岩淵駅を介して東京メトロ南北線と相互直通運転を実施し、さらに東急電鉄目黒線とも直通する。浦和美園駅付近には「埼玉スタジアム2002」というサッカースタジアムがある。サッカーファンに知名度の高い路線でもある。

入り口は調理室側から。この廊下を歩くと汽車旅の気分が盛り上がる 入り口は調理室側から。この廊下を歩くと汽車旅の気分が盛り上がる

 埼玉高速鉄道は駅の広告収入の1つとして、副駅名を募集しており、東川口駅の副駅名に「ピュアヴィレッジ なぐらの郷 最寄駅」が決まった。埼玉高速鉄道の現社長は荻野洋氏。その経歴には「昭和45年日本国有鉄道入社、平成6年JR東日本広報部長、平成12年同社取締役盛岡支社長、平成15年日本レストランエンタプライズ代表取締役社長」とある。食堂車スシ24の保有者はJR東日本、食堂車の運営は日本レストランエンタプライズだ。東川口駅付近に北斗星の食堂車がやって来た理由は、埼玉高速鉄道社長がピュアホームズの事業に理解を示したという縁だ。

 食堂車をレストランに改装するにあたり、同社の建築事業の取引先の協力を得た。通路の壁に備えられた手洗い設備もちゃんと使えるし、BGMはもともと装備されていたBGM用スピーカーを使っている。残念ながら車内放送用のスピーカーは使えない。車両の空調機も使用できなかったため、家庭用の大型エアコンを取り付けた。それ以外は現役時代の雰囲気そのままだ。

 開店から20日間で、北斗星を懐かしむ人々が次々に訪れた。北斗星に乗車した際に知り合った男女グループ、20年以上も前に新婚旅行で北斗星に乗車した夫婦、北海道からは80歳の男性、長野からは女子高生、静岡や川崎からは小学6年生が一人旅。私が訪れた日のランチタイムには、かつて食堂車に乗務されていたアテンダントさんがいらして、当時と変わらぬ景色、そして室内に染みついたにおいに感動されたと聞いた。

運行当時のままの食堂車があった 運行当時のままの食堂車があった

 食事を楽しみつつ、車窓の庭園は夕景から闇に移り変わる。暗い窓に映ったテーブルクロス、照明も現役時代のまま。ただし列車は動かないから静かで、振動はない。本物の北斗星で長時間停車をしているような錯覚に陥る。「この先、悪天候で足止めらしいね」「その分、のんびりできていいな」などと冗句を飛ばしたくなる。もし、列車が動いたと感じたら、酔いが回ったと思った方がいい。

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