日本が高齢化に向かっているのは、もはや日本人であれば誰もが知っている事実だ。しかし悲しいかな、人間の想像力はそう簡単に自然発動しない。高齢化社会でいったい何が起きるのかということを直感的に予測できるかと言えば、なかなかそうはならない。今回はその高齢化社会をできるだけリアリティを持って想像し、そのために自動車メーカーが行っている取り組みを考えてみたい。
まずはこれまでの高齢化の推移と未来予測の話だ。下図は内閣府が作成したものである。棒グラフは日本の総人口と年齢別構成比を表し、そこに折れ線グラフで65歳で線引きした高齢化率を重ねたものだ。
総人口は2010年にピークを迎え減少に向かっている。同じように減少に向かっているのは19歳以下の層で、これは出生率の低下が原因だろう。一方で向こう35年間、2040年まで着実な伸びをみせているのが65から74歳の前期高齢者層。それを上回る勢いで増えているのが75歳以上の後期高齢者層となっている。しかもこちらが減少に転じるのは半世紀近く先の2060年と推測されている。その結果がどうなるかは赤い折れ線グラフをたどれば明白で、高齢化率が二次曲線を描いて上昇している。
推察に過ぎないが、最も大きいのは医療技術の発達によって長生きになったということだろう。長生きになったこと自体は喜ばしいことだが、もちろん問題もはらんでいる。それは構成比に表れている。平成24年度の厚労省の研究によれば、男性の平均寿命は79.55歳、健康寿命は70.42歳でその差は9.13年。女性の場合それぞれ86.30歳と73.62歳で12.68年となっている。健康と言えなくなってから男性は約9年、女性は約13年生きるということである。
厚労省の言うことを信じれば、74歳までの前期高齢者は、ある程度自助生活可能なことが予測でき、ケースによっては生産人口としてカウントすることができるだろうが、さすがに後期高齢者となるとそうはいかない。自助生活ができない人が多くなり、労働によって生産に寄与することは難しくなる。前述の通り、内閣府が作成したグラフで見る限り、「社会がシステムとして支えなくてはならない」後期高齢者が最も顕著に増えているということがマクロで見た問題なわけだ。
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