ボルボは新型XC90で、新世代のエンジン&シャシー・アーキテクチャーをデビューさせた。マツダとトヨタで言えば、フルSKYACTIVになったCX-5、フルTNGAになった新型プリウスと同じく、新型XC90でボルボは新世代アーキテクチャーの時代に突入したのだ。
先週の記事で書いた通り、新世代のボルボの特徴は、モジュール設計の基本ブロック1種類にターボやスーパーチャージャー、ハイブリッドなどを単品、あるいは組み合わせて追加するというコンセプトの下、さまざまな用途と重量のクルマに対応するエンジンシステムのコンポーネント化を行ったことだ。
もう1つは、拡大縮小設計に対応したスケーラブル設計シャシーである。これは、これまで車種ごとに作り起こしていた設計要素を可能な限り共通化することで、長期的なコストを低減しながら、全体の性能を底上げする試みだと言えるだろう。
ここまでキレイに典型的なモジュール設計の例も少ないが、そのコンセプトや実現方法は極めて正攻法でボルボのイメージ通り手堅い。むしろ手堅さの徹底ぶりが突き抜けているという感じを受ける。
何が言いたいのかと言えば、実現レベルはすごいが、発想そのものは没個性的ではないかということだ。もっとも、そういうプリンシパル(原則)に則ってクルマ作りができないメーカーの方が多いので、個人的にはそこは高く評価している部分ではある。しかもボルボには全くの新機軸が用意されていた。それは脊髄(せきずい)の損傷を低減するという全く新しいコンセプトだった。
少し長くなるが、自動車の衝突安全対策の全体像をおさらいするところから始めたい。自動車の事故で人が死亡する原因は、当然ながら身体の損傷だ。だから第一に、衝突の際に生存空間が十分に残されなくてはならない。
そのためにボルボは5種類の硬度の違う金属素材を組み合わせて、「つぶして衝撃を吸収する」部位と「変形させずに乗員を守る」部位の強度を変え、車両の前後や床下などあちこちに「つぶれ代」を散りばめ、コンピューターシミュレーションによって骨格の各部からそのつぶれ代への衝撃の伝わり方をコントロールするシャシーを作ったのである。
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