なぜ「アイスクリーム」市場は伸び続けているのか高井尚之が探るヒットの裏側(4/4 ページ)

» 2016年06月09日 08時00分 公開
[高井尚之ITmedia]
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単品でナンバーワンは「エッセルスーパーカップ」

 実は、アイスの味の好みは昔も今も変わらない。圧倒的に人気なのはバニラ味、次いでチョコ味だ。業界内で年間売上高100億円を超える「メガブランド」は6つあり、長年親しまれるロングセラーブランドが並ぶ。

順位 商品名
1位 「エッセルスーパーカップ」(明治)約220億円
2位 「ガリガリ君」(赤城乳業)同145億円
3位 「パルム」(森永乳業)同140億円
4位 「ピノ」(森永乳業)同130億円
5位 「パピコ」(江崎グリコ)同130億円
6位 「チョコモナカジャンボ」(森永製菓)同125億円

 単一ブランドで最強が、明治の「エッセルスーパーカップ」(1994年発売)だ。発売時は当時の150ミリリットルで100円というアイスの常識を打ち破ろうと、200ミリリットル以上の容量で勝負した。「濃厚で量も多い商品にするため、乳脂肪ではなく植物性脂肪13%と卵黄脂肪で旨みを出したのです」(同社)。以来、20年以上この路線を貫く。

 同商品の容器に記された表示成分は「アイスクリーム」(乳脂肪分8%以上が条件)ではなく、乳脂肪分の少ない「ラクトアイス」だ。だが、そうした表示を消費者は気にすることなく、高い支持を集めている。

 販売本数でダントツなのが「ガリガリ君」だ。年間5億本を超える販売数は、単純計算で日本人1人当たり4本以上食べていることになる。口コミで話題を高めるマーケティングが得意で、以前に出した「コーンポタージュ味」や「ナポリタン味」も売り上げは振るわなかったが、大きな話題を呼んだ。2016年4月に小売価格を1本60円から70円に値上げした際は、同社の会長や社員が本社社屋の前で頭を下げる「お詫びCM」を放映。消費者に好意的に受けとめられた。

 上位ブランドの中で最も歴史が浅い「パルム」(2005年発売)が目指すのは、「平日のちょっとした贅沢の時に楽しむブランド」だ。1本売りの個別タイプは20代、30代の独身女性に、箱売りは主婦層に支持されているという。

 一方、同じ森永乳業の「ピノ」は、1976年発売の40年選手だ。レギュラーサイズは昔も今も1粒10ミリリットルの6粒入り。期間限定で「旨み抹茶」などを出すが、「基本は滑らかな味とチョココーティングのバランス。この部分は崩せません」(同社)という。

photo 「エッセルスーパーカップ」

低価格化した「自分へのご褒美」の象徴

 家庭用アイスには、「自分へのご褒美」需要もある。この言葉も出始めた当時に比べると低価格化が進んだ。昔のように給料日やボーナス時に、高額なブランド品を買って自分へのご褒美にするのではなく、ちょっとした機会に数百円の商品を頻繁に買うのだ。

 先日、それを裏づけるような話も耳にした。「お酒が苦手な私にとって、お風呂上がりのアイスは幸せなひととき。1週間働いた自分を癒す休日前は『パルム』を楽しみ、もう少し特別な日には『ハーゲンダッツ』を買います」(30代の女性美容師)

 小銭で買える「手軽さ」もあるアイスクリーム。仕事帰りや休日にコンビニやスーパーのアイス売場をのぞくと、さまざまな商品提案があり、新発見があるかもしれない。

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