売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由菓子でリフレッシュ(2/8 ページ)

» 2016年06月23日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

オフィス机の中に菓子があった

 オフィスグリコの源流をたどっていくと、今から約20年前の1997年にまでさかのぼる。

 この年、江崎グリコの江崎勝久社長の号令により、生活者との新たな接点を模索するプロジェクトが始動。このプロジェクトで行った生活者調査において、ある動向が浮き彫りになった。それは、お菓子を食べる場所は、家庭が約70%と圧倒的に多いものの、次いでオフィスが約20%と2番目に多かったこと、さらに、OLなどがオフィスの机の中にお菓子をしまっているケースが多いことなどが明らかになったのだ。

 この調査から、オフィスで菓子を消費するという新たな市場があることに着目。そこで同社が考案したのが、オフィスグリコだった。

 「さり気なく置かれている文具のような形で、オフィスの中に菓子を置くことができないか」(古藪社長)という考え方を採用、「リフレッシュメント」をコンセプトに、1998年に大阪で企業への配置テストを開始し、ビジネスとしての可能性を検証し始めた。

 「手本にしたのは野菜の無人販売。菓子を購入したい人が、お金を入れて商品を持って行く。日本の市場だからこそ、性善説に立ったビジネスが成り立つと考えた」(古藪社長)

 代金回収はグリコが行うが、販売数量と金額が合わない場合でも、企業にその差額は請求しない。「野菜の無人販売でも90%の回収率でビジネスが成り立つ。オフィスグリコもそれを参考にした。現在、約95%の回収率になっている」と古藪社長は言う。

 一方で、サービス開始当時は、オフィス内で菓子を食べるということが公には認められにくい風潮もあり、「飛び込みで営業しても打率は1割程度」(古藪社長)という状況だった。中には、「本当に、あなたグリコの人?」と予想外のビジネス提案に疑問を持つ企業すらあったという。また、テスト導入を行った企業でも、昼食時間の1時間だけ販売が許されるというスタイルが中心であり、まさに弁当販売と同じだった。

 だが、1時間だけに限定された仕組みでは販売にも限界がある。1時間だけ商品を展示販売するというのも効率的ではない。そんなときに目を付けたのが宅配便の仕組みであった。どんな時間でもオフィスの中に入っていくことができる宅配便の納品の手法を参考にすることで、オフィスに常に設置されたリフレッシュボックスに商品を補充したり、品揃えを変えたりといったことが可能になると考えたのだ。

 その結果が、今のオフィスグリコの販売スタイルの原型になっている。1999年には、大阪に第1号販売センターを開設。そこを拠点として、グリコのスタッフが導入企業を訪問するという仕組みを確立した。

 さらに、2002年には東京に進出して本格展開をスタート。2002年度に1万2000台の導入、売上高3億円の事業規模だったものが、2015年度には13万台、53億円のビジネスに成長した。

オフィスグリコの売上高推移。いまや53億円のビジネスに成長した オフィスグリコの売上高推移。いまや53億円のビジネスに成長した

 現在、東京、大阪、名古屋、福岡、広島など、オフィスが集中する大都市圏エリアにおいて、60の販売センターを設置。約600人のスタッフが、約11万事業所に設置された約13万台のリフレッシュボックス、約2万台のアイス・飲料ボックスを巡回し、定期的に商品の補充、入れ替えを行っている。

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