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» 2016年07月15日 08時00分 公開

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:どこが違うのか クルマと鉄道の「自動運転」 (5/6)

[杉山淳一,ITmedia]

自動運転の前提にあった保安装置

 鉄道の無人運転は多大な努力と数年間にわたる技術の醸成によって達成された。しかし、歴史的に俯瞰(ふかん)すると既存の安全装置の延長である。では、既存の安全装置とはどのような仕組みだろうか。

 追突、衝突安全については、鉄道では「閉塞」という伝統的な技術がある。線路を一定の間隔で区切り、1つの区間には1つの列車しか入れない。閉塞区間の手前には信号機を置く。運転士が停止信号を見落とした場合は2つの安全装置が働く。1つはATS、もう1つは安全側線だ。

 ATSは運転士が操作しなくても強制的に非常ブレーキをかける。日本で初めて実用化されたATSは1927年に開業した地下鉄銀座線だ。赤信号と連動してレール間に設置した板が持ち上がり、車両側のレバーが接触し倒れると非常ブレーキが作動する。かなり原始的だけど、私が高校時代に見ているから、1980年代前半までは現役だった。

 これ以降は電気信号式になっている。官営鉄道では大正時代から試験を実施しているけれど、実用化は1941年からだ。ATSはその後、鉄道会社各社で改良されており、機能も多岐にわたる。現在は非常ブレーキだけではなく、急カーブで制限速度までブレーキをかけるといった速度調整も可能になった。

 安全側線は脱線ポイントともいう。赤信号と同時にポイントを本線の外側に切り替える。ただし、切り替えた先には線路がなく、砂利を積んだ小山などである。列車同士の衝突を避けるため、暴走する列車のほうをわざと脱線させる。恐ろしい仕組みだけど、現在も各地で稼働している。

近距離形浮上式リニアモーターカー「リニモ」もATO採用路線 近距離形浮上式リニアモーターカー「リニモ」もATO採用路線

 ATSの次の段階として、ATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)が開発された。名前だけ見ると自動運転してくれそうだけど、加速機能はない。地上の信号機の代わりに運転席に制限速度を示し、その速度を超える場合に通常のブレーキをかけ、制限速度以内に収まったらブレーキを解除する。

 このブレーキは非常ブレーキの1つ手前の強い制動力を持つため、乗り心地は悪い。だから運転士は制限速度を注視し、穏やかにスピードを落としている。ただし、信号が速度0を示したときは赤信号と同等だから、見落とすと非常ブレーキがかかる。ATCも進化しており、最新式のデジタル式は前後の列車の運行間隔を精査して速度を調節する。

 ATCの次の段階にATOがある。発車、加速、走行、減速、停止までを自動的に行う。線路側で位置情報を発信し、列車側が位置を読み取り、あらかじめ設定された加速や減速を行う。

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