2007年の香川丸亀ハーフマラソンに出場したときだったと記憶している。当時、福士は筆者に「なるべくならばレースが終わったら笑顔でいたい。必死になって走った後、同じように辛い顔をしていたら周りも自分も暗くなってしまう。それは嫌でしょ。だからそれが自分のスタイル。非常に不器用なのかもしれないですが……」と言ったことがある。その言葉は今も頭の中にこびりついている。
だから毎回レース後に飛び出すおちゃめな発言(今回のリオ五輪では“KY発言”と多くの人から受け止められているが)も、そしてあえて貫き通す笑顔も不器用だからこそ揺れ動く内面や本心を周囲に見せまいとするための“仮面”にしているのではないだろうか。
それが証拠にゴールイン後、笑顔を見せながらも福士は汗とともに流れ落ちる大粒の涙を周囲に気付かれないように何度もタオルでぬぐっていたという。素顔は不器用かつストイックな「みちのくの爆走娘」の4度目の五輪が終わった。
「がんばったけど、負けた。人生で一番がんばった」。
そう自分に言い聞かせるようにコメントした福士は死力を振り絞りながらも「負けた」ことで、内心では悔しさと納得感が複雑に絡み合っているはず。負ければ批判を受けるのが代表の宿命であることも十分によく分かっている。今後は休養が濃厚だが、気持ちを整理してすべてをリセットしてほしい。
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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