「国内出張でホテルが取れない」という声をよく聞く。2015年にはインバウンド(訪日外国人)が年間1973万人を超え、2012年の同835万人から倍増した結果、ホテル不足がいわれるようになった。インターネットの予約サイトで早めに「満室」となることも多い。
だが、実は最近の客室稼働率は下がっている。ビジネスホテルの業界団体である全日本シティホテル連盟の調査では、2016年5月まで7カ月連続で前年同月を下回った。そこにはこんな裏事情があるという。
「ホテルを早めに確保したい消費者心理で、複数のホテルを早めに予約しておき、違約金が発生する直前になってキャンセルする人が目立ちます。ホテルにとっても機会損失ですし、本当に泊まりたい利用客も諦めてしまう現象が起きています。実は当日の午後に予約を入れれば、部屋が空いているケースも多いのです」(業界関係者)
冒頭に記した交通の高速化や経費節減の影響も無視できない。例えば新幹線で東京駅〜新大阪駅が2時間40分台で行けるようになり、もはや両都市の日帰り出張は当たり前だ。
そうした「日帰り出張時代」の対策としてリッチモンドホテルは「家族旅行への訴求」「外国人観光客への訴求」を強化している。
「家族旅行への訴求」では、ゆっくりくつろげるように通常のチェックアウト時間が11時のところを12時に延長したり、小学生以下の子どもの添い寝は無料といったプランを用意。「外国人観光客への訴求」では団体客ではなく、個人客中心に受け入れており、外国人リピーターも増加中という。
日本人の平均宿泊数が2.6日なのに対して、外国人は5.4日と長いため、外国人の顧客獲得は稼働率の高値安定も期待できる。その外国人客を見据えたホテルとして、2015年には「リッチモンドホテルプレミア浅草インターナショナル」も開業した。
もちろん「ホテルの魅力の深掘り」には一番力を入れる。昨年は同ホテル会員を対象にグループインタビューなどの対話を実施したほか、会員にメールを送り、約1000人から意見・要望を集めた。前述のハブラシの交換も会員の意見を反映させたものだ。
消費者に「店」が選ばれるキーワードは、「価格」「快適性」「機能性」「くつろぎ感」だが、これはホテルも飲食店も変わらない。好調の背景にはロイヤルホールディングスとしての強みや、経営哲学が反映されたホテル作りにあるようだ。
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