アニメ・マンガ文化に対して理解があるエリアでは当然、制作段階でのサポートが受けられる。プロモーションの予算もつきやすい。岡山県高梁市とほど近く、『天地無用!』の舞台となっている倉敷市は、2017年3月公開のアニメ『ひるね姫』の舞台ともなっている。先日、市は映画と連動した観光プロモーション費として3963万円を計上した。
こういう政治的力学が働くのは岐阜も同じだ。他エリアよりも「聖地」が生まれやすいのは、容易に想像できよう。ただ、岐阜を舞台にしたアニメ作品が多く制作されているのは、もうひとつ大きな要素があると思っている。それは「人材」だ。
9月に公開される『聲の形』の作者である大今良時さんは、作品の舞台となっている大垣市の出身。『氷菓』の原作は岐阜県出身の作家・米澤穂信さん。『僕らはみんな河合荘』も岐阜出身の女性マンガ家・宮原るりさん。『のうりん』の作者・白鳥士郎さんも岐阜県多治見市出身とされている。
つまり、冒頭のニュースでいう『実は近年、深夜のテレビアニメを中心に、岐阜の存在感が高まっていた』というのは正確には、アニメ・マンガに関わるクリエーターたち中で「岐阜県出身者」の存在感が高まっていた、というべきなのだ。
これが岐阜県の「アニメ・マンガを産業振興にしよう」としてきた戦略や人材育成などが結実したものなのかどうかは定かではない。「大手広告代理店が岐阜のPRのために、『岐阜アニメ』をゴリ推ししているに違いない」と疑心暗鬼になっている方もいるだろう。
そのあたりはアニメ・マンガ業界に詳しい方にぜひ考察をしていただくとして、ここではっきりと言えるのは、尾道出身の大林宣彦監督が『尾道三部作』をつくったことで、尾道に「聖地」が定着したことと同様の動きが、岐阜県内で起きているということだ。
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