それでも「カップヌードル謎肉祭」販売休止を「品薄商法」だと疑ってしまう理由スピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2016年09月20日 07時53分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 発売前からSNSで話題を集めていた「カップヌードルビッグ "謎肉祭" 肉盛りペッパーしょうゆ」に「品薄商法」の疑いがかけられている(関連記事)

 ダイスミンチが通常の10倍入った「謎肉祭」は9月12日に発売したが、直後の15日に販売休止が発表された。日清食品(以下、日清)の説明によると、見積もっていた1カ月分の在庫がわずか3日で底をついたという。ところが、SNSに『近所のコンビニで山積みなんだけどなぁ』と実際に店内に「謎肉祭」が山積みの写真を投稿する方などがちょこちょこ現われ、「品薄商法では」という指摘をする人も出てきたのだ。

「カップヌードルビッグ "謎肉祭" 肉盛りペッパーしょうゆ」の販売休止の報道に対し、「品薄商法では?」と疑いがかけられている

 ただ、世の大多数は、こういう見方に否定的だ。

 小売店というのは、売れ行きを随時チェックして、「これは在庫がなくなりそうだ」ということになれば追加注文をする。一方、メーカー側の「販売休止」はあくまで「注文を受けても出荷できません」という流通へのアナウンス的な意味合いが強い。つまり、メーカーの在庫が底をついても、店頭には山積みという状況はまったくおかしくないからだ。

 これに加えて、「品薄商法」疑惑が否定される最大の理由は、メーカーにメリットがないということが大きい。

 瞬間風速的に話題をつくることができても、そこで小売に「売れる品を提供できない」という大きな機会損失を与えてしまう。流通が圧倒的に強い立場にある日本の市場で、メーカーが自身の信用を地に堕とすようなリスキーな戦略をとるわけがないというわけだ。

 こういう常識的なものの見方をすれば、今回の疑惑もSNSが生み出した「風説」や「デマ」の類だと結論づけられる。

 ただ、それを踏まえた上でもなお、「謎肉祭」の販売休止には「謎」が多い。過去、メーカー側の供給が間に合わず、「品薄商法」の疑いをかけられた商品と比較して、明らかに異なる売り方をしているからだ。

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