世界に通じる観光列車へ! 「木次線ワイン&チーズトレイン」から始まる未来杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2016年10月21日 06時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

地元企業と日本旅行鉄道プロジェクトが動いた

 その後、雲南市は地元の企業とJR西日本の木次鉄道部に打診し、了承を得た。そして強力な援軍も現れた。日本旅行の鉄道プロジェクトだ。鉄道に関する数々の企画旅行を実行し、鉄旅オブザイヤーの受賞も多数。今年から運行を開始した道南いさりび鉄道の「ながまれ海峡号」を実現した旅行会社である。

 7月下旬。雲南市役所の会議室に、新しい観光列車にかかわるメンバーがそろった。雲南市が地元企業を取りまとめ、日本旅行がプランを作り、集客、催行すると分担が決まった。

 一般車両にテーブルを設置した食堂車は、解決すべき課題があるとのことで見送り。今回は奥出雲おろち号に乗る形で、1回に付き最高20人と小規模になった。これは体験施設の収容力の都合と、「大勢で雑然とした見学ツアーより、一人一人に行き届いたサービスをしたい」という気持ちもあるようだ。

新しい観光列車の年間スケジュール案(出典:同 講演資料) 新しい観光列車の年間スケジュール案(出典:同 講演資料)

 奥出雲おろち号は貸し切りではない。ツアーに参加していない乗客もいる。「あの人たちはワインを持ち込んで何をしているんだろう?」と興味を持ってもらえれば、雲南市はワインとチーズの里であると宣伝できる。専用列車にはならなかったが、小さくても1歩は踏み出せたのだ。

 木次線でワインとチーズを楽しみ、ワイナリー見学とレストランの食事というアイデアは、地元企業からのアイデアを日本旅行が取りまとめ、モッツァレラチーズ作り体験や酒蔵見学なども加えて、充実した内容にした。

 木次線ワイン&チーズトレインは、雲南市と木次線の新たなスタートラインだ。今回は素晴らしい内容である。きっと回を重ねるごとに充実するだろう。今後は奥出雲町も巻き込んで、「日本酒と出雲蕎麦とスイッチバック」も実現してほしい。究極の目標は「東洋のナパバレー・ワイントレイン」だ。いつの日か専用車両を仕立て、日本を代表する観光列車へと成長してほしい。

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.