「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。
ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
「接客」というのは難しい。コンビニオーナーや店長、本部の理想が高くても、現場で実現するとは限らない。「コンビニの接客はマニュアル」と揶揄(やゆ)されることもあるが、それが避けられない事情もある。
今回は、コンビニ接客の現状と可能性について考えてみよう。
読者の皆さんは、コンビニに行ったとき何も買っていないのに「ありがとうございます」と言われて不思議に思ったことはないだろうか。実はこの「ありがとうございます」……ほとんどの店員が条件反射で言っている。
入り口のドアが開閉するとき、センサーが反応してチャイムが鳴る。「チャイムが鳴ったらあいさつをする」――。ほとんどのコンビニがそういう接客マニュアルでアルバイトを教育している。
建前は、どのお客さんにも来店のお礼として「ありがとうございます」を言うようにと教育しているが、その根底にあるのは「あいさつがない」というクレームが出ないようにするためだ。たった一言のあいさつがなかっただけでクレームを受けるくらいなら、立ち読みだけのお客さんに対しても、チャイムが鳴ったら「いらっしゃいませ」とか「ありがとうございます」を言えば済むからだ。
あいさつの進化形として、「いらっしゃいませ」の後に「ありがとうございます」をかぶせるパターンもある。例えば、店員の1人が「いらっしゃいませ」と言ったら、他の店員が「ありがとうございます」と続けて言う連携プレーだ。こうして「あいさつがない」というクレームに対応すべく、しつこくあいさつをするマニュアルができたのだ。
ただ、過剰なあいさつの一方で、それに慣れてしまうこともある。むしろ、あいさつが聞こえてこない店に違和感を覚えるのは筆者だけだろうか。
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