「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。
ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
8月15日、居酒屋チェーン「鳥貴族」が直営店の南柏店(千葉県柏市)で焼酎と食品添加物アルコールを入れ間違えて、チューハイを151杯提供していたことが分かったと発表した(関連記事:焼酎と誤り……食品添加物アルコール製剤をチューハイとして客に提供 「鳥貴族」が謝罪)。
「なんだこりゃ! マニュアル通りにやっていれば、こんなことは起きないはず」と思われたかもしれないが、実は「マニュアル通り」にやっていてもミスが生じることがあるのだ。どういうことか。
今回は、コンビニ運営マニュアルの実態について紹介しよう。
先のニュースで、筆者は以下の部分に注目した。
チューハイを提供するためのドリンクサーバーに焼酎を接続して使用するが、従業員が誤って食品添加物アルコール製剤をセット。
(中略)
両方とも透明の液体であり、段ボール製の包みを取り外した透明な容器に入った状態で使っていたため、見た目には焼酎との区別が付かない状態だったことなどが原因という。発覚後、一目で区別できるものに全店で入れ替えた上、焼酎の交換作業の詳細な手順書の作成・周知や、保管場所をあらためて定めるなどの再発防止策を講じるとしている。
今回、酒と消毒用アルコールを間違えた主な原因は、パッケージがよく似ていたことだろう。そして、「消毒用アルコール」と記載のある段ボールからわざわざ出して使用していたことが、さらに発覚を遅らせたようだ。
鳥貴族では二度と同じ過ちを犯さないように対策を講じたようだが、「見れば分かるようにした=間違いは起きない」というのは、少々早計な判断ではないだろうか。すべての業務がマニュアル化され、数人の社員もしくは責任者以外はアルバイトで運営している業界では、似たようなケースが今後も起きる可能性はあると筆者は考えている。
「えっ、マニュアルがあるのに間違えるの?」。読者の中にはそう思った人もいるのではないだろうか。すべての作業工程がマニュアル化されているコンビニでも、ミスは日常茶飯事だ。現場では「見れば分かるでしょ?」という想定外のミスが起こる。コンビニオーナーなら誰しも一度は経験しているだろう。
一言で言えば「操作マニュアルと作業マニュアルは違う」ということだ。店舗を運営するに当たり、この2つのマニュアルがごちゃまぜになっている場合が多い。次に、レジ操作を例に詳しく説明しよう。
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