これから起こる「トランプリスク」とはマネーの達人(2/6 ページ)

» 2016年12月12日 15時15分 公開
[原彰宏マネーの達人]
マネーの達人

今回の米大統領選挙の構図

 今回の米大統領選挙は「中間層・低所得者層VS. 支配者層(エスタブリッシュメント)」という構図になっていたようです。

支配者層の代表

 クリントン氏は支配者層の代表のような存在であり、共和党においても、トランプ氏以外はみな支配者層とみなされていたようです。

 支配者層を「金持ち」と理解すれば「低所得者層VS. 富裕層」という構図ともとれますが、そうなればトランプ氏は不動産王と呼ばれる富裕者層に属します。

「クリントン財団の闇」は深い

 トランプ氏が富裕層であることは間違いありませんが、財界とのつながりではクリントン氏のほうが強い印象がありました。特に、米国国民がクリントン氏に好感を持てないでいるのは、クリントン財団に“闇”と呼ばれる部分があるからでしょう。同じ富裕層でありながら、中間層や低所得者層から見れば「クリントン氏よりはトランプ氏のほうがマシ」ということかもしれません。

 それだけ「クリントン財団の闇」は深いのですが、その説明に関しては本稿では割愛します。

中間層や低所得者層のリーダー

 中間層や低所得者層の人たちは、自分たちが今の困窮状態に強いられているのを移民政策の問題ととらえています。トランプ氏の「移民を排斥する」というメッセージに強いリーダーシップを見たのでしょう。

 「かつての米国に戻ろう、米国人の手に戻そう」という発想から、いままでタブー視されてきた移民問題に真正面から切り込んだトランプ氏に共感したと思われます。強い米国、「Make America Great Again」のスローガンにつながり、自分たちの思いの代弁者という偶像を作り出したのでしょう。

格差社会を作ったグローバリゼーション

 支配者層のもう1つの側面は、グローバリゼーションの恩恵を受けている層という位置付けもあります。グローバリゼーションの恩恵を受けているのは金融業です。「ウォール街を占拠せよ」という運動は、記憶に新しいです。

 ずっと米国が取ってきた政策は、国内産業を育てることよりも世界競争に勝つことを優先してきたということです。製造業よりもITなどのサービス業、付加価値産業に重きを置く戦略を取り、金融立国の道を強く推し進めてきました。

 トランプ氏を支持した中間層や低所得者層にとっては、グローバリゼーションはまったく関係なく何の恩恵も受けていません。ウォール街を中心とした高報酬者への不満が爆発したのだと思われます。

 まさに「格差」社会です。おそらく、これから日本が歩む道ともいえるのかもしれません。

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