「だったら最近よく目にする日本や日本人がいかにスゴいかを紹介するテレビ番組も、『自信』を取り戻すという意味ではいいことじゃないか」と思う人もいるだろうが、これはかなり用心したほうがいい。
確かに、自国への「誇り」が国民一人一人の「自信」につながるということもあるかもしれない。しかし、もしその「誇り」がおかしなものへ向けられてしまうと、日本社会全体が「迷走」してしまう恐れもあるからだ。
例えば、先週末に放映された『世界が驚いたニッポン!スゴ〜イデスネ!!視察団』(テレビ朝日系)の4時間スペシャルなんかが分かりやすい。
普段は、海外の方たちに来日させて、日本がいかにスゴいかということを賞賛していただく番組なのだが、今回は年末特番ということで趣向を変え、「外国人ジャーナリストが選ぶ日本のスゴイ所ベスト50」と銘打ち、外国人ジャーナリストたちが、「世界に伝えたい」と答えたものを集計したという。
「温水洗浄便座付きトイレ」「温泉」というお馴染みのものから、「100円ショップ」「消臭」など我々からすればごく当たり前のようなものまで「日本のスゴさ」が続々と紹介されていく中で、第1位になったのは「電車」だった。
秒単位の正確さでピタッと電車がやって来る運行ダイヤに対して、海外のジャーナリストたちが口をそろえて「スゴい!」と絶賛したというのだ。
そうそう、こういうところは日本人が世界一なんだよ、と誇らしげな気持ちになっている方たちには申し訳ないが、個人的には「運行ダイヤの正確さを世界に誇る国」とみられているのは、あまり喜ばしいことではないと思っている。
なぜか。実はあまりにも度を越した「電車の正確さ」というのは、ファシズム(全体主義)に陥った社会特有の現象だからだ。
何を言っているのだ、この反日ライターはとお怒りになる方も多いかもしれないが、実は過去にも鉄道の正確さをファシズムと結びつけたジャーナリストがいる。
その人は、ヒトラーにインタビューを行い、「ナチ党なんてポピュリズム集団だろ」と多くの知識人が鼻で笑っていた時代から、欧州を覆いはじめたファシズムの台頭に警鐘を鳴らしていた。
もうお分かりだろう、ピーター・F・ドラッカーだ。
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