「日本の鉄道は世界一」という人がヤバい理由スピン経済の歩き方(4/4 ページ)

» 2016年12月20日 08時27分 公開
[窪田順生ITmedia]
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自分たちは重い「病」にかかっている

 今の若者の感覚すれば、いったい何がいけないのだと思うかもしれないが、当時は組織に貢献をしない若者は「病」とされたのだ。「ファシズム」と聞くと、「確かに戦時中は日本もそういうところがあったかもしれないけど今はこんなに自由じゃない」と思う人がほとんどだが、現代にいたるまで日本は一貫としてファシズム的社会が続いているのだ。

 『こうした青年の来院はここ数年、目立って増えている。それだけに次々と訪れる、物静かだが自信に満ちた青年たちを見ていると、医師も病気と診断すべきかどうか首をかしげた』(日本経済新聞 1991年11月10日)

 日本はこういう「個」で自信に満ちて生きる若者を徹底的に排除してきた。「日本はスゴい!」「日本は世界一!」と声高に叫ぶ人はたくさんいるのに、「俺はスゴい!」と言える人が少ないのは、そういう理由だ。

 なぜ多くの外国人ジャーナリストたちが「運行ダイヤ」を絶賛したのか。「やっぱり外国人はマンホールを撮影したり、日本人とは視点が違うなあ」で済ますのではなく、そこに引っかかった理由を、我々は深く考えるべできはないのか。

 かつてドラッカーがファシズムの本質だと述べた「運行ダイヤの正確さ」を誇らしげに感じてしまう我々に問題はないのか。

 そろそろ自分たちが重い「病」にかかっていることを自覚したほうがいい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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