米国の衰退から学ぶ、ショッピングモール再生来週話題になるハナシ(2/3 ページ)

» 2016年12月28日 07時00分 公開
[藤井薫ITmedia]

ショッピングモール衰退の背景

 そんなショッピングモールは、リーマンショック以後、どんどん厳しい状況になった。特に地方を中心に閉店に追い込まれたショッピングモールも少なくない。

 一般的にショッピングモール衰退の背景には、ネットショッピングなどの台頭があると言われている。ただそれだけが理由ではない。

 原因のひとつには、ショッピングモールの主要テナントである百貨店の不振がある。洋服などのファッションにお金をかける消費者の減少により、大手百貨店はかなりの苦戦を強いられている。

 大手百貨店のMacy'sは、すでに55店舗を閉店させているが、残る全店舗の約14%にあたる100店舗を新たに閉店することを発表したばかりだ。

 言うまでもなく、主要テナントの撤退はショッピングモールを運営する会社にとって大打撃だ。賃貸収入が減るのはもちろんのこと、空いたスペースに別のブランドを誘致するのは至難の技だからだ。

 さらに、百貨店の入っていた広いスペースが空くと、ショッピングモール自体のイメージも悪くなる。閉店した店舗が目立つと「寂れた感」が出てしまい、モールを訪れる客足に影響が及ぶため、他の店舗の売り上げも左右されてしまう。負の連鎖になりかねないのだ。

 ショッピングモールの衰退には、こんな意外な理由もある。モールが商業目的だけに偏り過ぎていることだ。

 利益を重視して何がいけないのか。グルーエンは、ショッピングモールを構築する際に、古代ギリシャの集会所や中世のマーケットのように、共同生活に必要な生活を豊かにするコミュニティセンターの役割をイメージしたという。

 つまり、単に買い物をするだけではなく、文化的、社交的、市民的、レクリエーション的な役割を持つショッピングモールこそが、人やモノや情報が行き交い、商業的な成功を収めることができるのだという。

 例えば、病院や医療センター、ホテル、オフィス、居住スペース、劇場や展示ホール、子どもの遊園地や教育施設などがあれば、ショッピングモールを訪れる人の滞在時間やトラフィックが増え、利益増にもつながるというのだ。

米国では百貨店の不振などによって、ショッピングモールが衰退している(写真はイメージです)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.