連載
» 2017年02月14日 08時10分 UPDATE

スピン経済の歩き方:「事実はひとつ」という人が、実はヤバイ理由 (6/6)

[窪田順生,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6       

多種多様な「オルタナティブファクト」を提供する

 「事実」を国民に伝えるだけなら、ストレートニュースを機械的に配信するワイヤーサービス(通信社)でいい。こういう事故が起きて何人亡くなりましたとか、どこそこで火事がありましたというだけなら極端な話、政府広報だっていい。

 では、ジャーナリストがやるべきことはなにか。「あいつらは話の通じない連中だから叩き潰してわからしてやれ」と頭に血が上っている世論に、「オルタナティブファクト」を突きつけることだ。

 つまり、「事実はひとつ」だと思い違いをしている人に、多種多様な「オルタナティブファクト」を提供する。それはネットメディアも同じだ。「デマ」も撒き散らすこともある一方で、ここによって既存メディアがスルーする「別の事実」が浮かび上がるケースも多いではないか。

それこそが最大の役割だ。

 ところが、日本のマスコミは『サンデーモーニング』と同じく、「オルタナティブファクトとかありえないっすよね」とか言っている。これほど怖いことはない。

 先の女性評論家が「事実はひとつがいい」と発言される前、『サンデーモーニング』では、架空の全体主義国家を描いたジョージ・オーウェルの小説『1984』が今、米国でベストセラーになっているという話題と、「オルタナティブファクト」騒動を結びつけて、「恐ろしいことですなあ」とみんなで眉間にしわをよせていた。

 『1984』で描かれた社会に近づいているのは、実は米国ではなく、我々のほうではないのか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


前のページへ 1|2|3|4|5|6       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ