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» 2017年02月14日 08時10分 UPDATE

スピン経済の歩き方:「事実はひとつ」という人が、実はヤバイ理由 (2/6)

[窪田順生,ITmedia]

「オルタナティブファクト」は必要不可欠

 「メディアリテラシー」なんて言ったところで、どうせ大衆には無理なんだから、という「上から目線」なところも気になるが、なによりも戦慄したのは、彼女が希望する「事実はひとつ」という世の中は、「ファシズム」(全体主義)以外の何物でもない点だ。

 『サンデーモーニング』の出演者といえば、平和と自由を愛してやまなず、時に安倍首相をヒトラーに重ねて茶化すほど、全体主義を憎んでいらっしゃる。そのようなリベラル知識人が無意識に「全体主義」を心待ちにしている、という皮肉な構造が恐ろしくてたまらないのだ。

 なぜそんなアベコベのことが起きてしまうのかというと、『サンデーモーニング』出演者のみなさんが憎んでやまない「オルタナティブファクト」というものが民主主義国家において、建前的には否定されつつも、実のところは必要不可欠な要素だからだ。

 例えば、今回の日米首脳会談で安倍さんは米国を「民主主義のチャンピオン」だと述べた。もちろん、ゴマすりなのは明らかだが、米国人の多くはそれをお世辞ではなくて「事実」だと信じて疑わない。

 では、我々日本人はそれを「事実」だと心の底から受け入れられるのか、という問題がある。広島と長崎に原子爆弾を落として、30万人を超える非戦闘員の命を奪った「事実」からすれば、どの口がそんなことを言うのかという人もいるだろう。もっと言ってしまうと、反トランプ派は「自由の国、移民の国」だと自画自賛するが、歴史的事実からみると、あの国の繁栄は、のんびり暮らしていたネイティブアメリカンたちの無数の屍の山の上にある。建前的には、人種差別も過去のものとなっているが、トランプ政権になる以前から市民レベルではいまも根強い差別が残っている。米国人の主観的事実と、日本人の客観的事実でもこれだけのギャップがある。これは、自由なものの見方が保証されている社会だからこそ、生まれる「オルタナティブファクト」だ。

「オルタナティブファクト」は建前的に否定されつつも、必要不可欠な要素(出典:トランプ大統領のFacebook)

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