連載
» 2017年02月14日 08時10分 UPDATE

スピン経済の歩き方:「事実はひとつ」という人が、実はヤバイ理由 (4/6)

[窪田順生,ITmedia]

平和主義者たちに共通している特徴

 批判をしているわけではない。もし仮に筆者のような主張をする者や、警察側の数字を支持する者たちがなかなか、自分たちが主張する「事実」を受け入れない場合、このような方たちはどういうアクションをとっていくのかを想像してほしいだけだ。

 「事実はひとつ」なのだからどこかで相手を屈服させなくてはいけない。精神的に追い詰めて、「すいません、そちらが事実でした」と認めさせる。では、それでも屈服しない者がいたらどうする。北の強制労働所ではないが、暴力に訴えるしかないのだ。

 実はこのあたりが平和を愛し、差別を憎むことを表明されている方々がどういうわけか、「好戦的」になってしまう事情と関係している。

 自分たちの主張が確実に正しい。訴えていることは一点の曇りもなく「事実」だ。そう信じて疑わない人は、自分と異なる主張をする人間を受け入れられない。だから、徹底的に非難する。しかし、それでもその人間が変わる見込みがない場合どうなるか。事実を受け入れない「悪」は力づくで取り除くしかない。そう思うのではないか。

 ラブ・アンド・ピースで反戦を歌う曲もあるマドンナが、トランプ批判の勢いあまって、「ホワイトハウスを吹き飛ばしたいって、心の底から思ってる」なんてテロを連想させるような発言をしたのは、これが理由だ。

 ただ、これはなにもマドンナだけではなく、古今東西の平和主義者たちに共通している特徴だ。英国の著名な戦略思想家、ベイジル・リデルハートは、英ブラッドフォード大学のマイケル・パフ教授の論文の中で、このように述べた。

 「たくさんの平和主義者の友人と付き合っていて、彼らの意見にもちろん共感する。しかし、戦争の廃絶ということではほとんどがっかりすることが多い。なぜなら、彼らの強烈な平和主義の中には、ケンカっ早さが見えてしまうからだ」(PACIFISM AND POLITICS IN BRITAIN 1931-1935)

 平和が好きで好きでしょうがない。だからこそ、自分たちが信じて疑わぬ平和を脅かすものが許せないのかもしれない。ただ、それは突き詰めていけば、ドイツ人の平和と安定を揺るがすユダヤ人たちに憎悪が向けられた構造と、実は紙一重なのだ。

平和主義者の人たちが陥りやすいワナとは……(写真はイメージです)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ