日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
先日、ザッピングをしていたテレビから流れてきた「議論」を聞いて背筋が凍りついた。
トランプ大統領の就任式に「史上最多」の人が集まったと大統領報道官がホラを吹いた、と米メディアが批判。それを受けて大統領顧問が「オルタナティブファクト(代替的事実)を述べただけ」と釈明したことを、TBSの『サンデーモーニング』で取り上げていたのである。
そうだよな、「もうひとつの事実」なんて言って「嘘」をゴマかす政府はどんなヤバいことをするかわかったもんじゃないもんな、という声が聞こえてきそうだが、筆者が恐怖を感じたのはそんなところではない。
スタジオでいつものように、立派な大学教授やジャーナリストのみなさんが、「デマを拡散するネットメディアが悪い」とか「日本も他人事ではありません」などと高尚なやりとりがなされる中で、著名な女性評論家の方が言い放った一言にゾゾッときたのだ。
「やはり事実はひとつがいいですよ」
それほど真剣に聞いていたわけではないので、一字一句正確ではないが、確かにこのような主旨のことをおっしゃった。トランプ政権を支持するネットメディアが「フェイクニュース」を拡散する問題を受けて、個々のメディアリテラシーが重要になってくるという話をされた後に、とはいえこれだけ世に溢れかえる情報を個人がひとつひとつ精査することは不可能だからといった流れで、このような発言につながったのだ。
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