なにわ筋線に阪急電鉄参加、各社への波紋杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2017年03月31日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

大阪市、南海電鉄、京阪電鉄の思惑

 2012年の大阪都構想では、地下鉄改革プロジェクトチームが四つ橋線と阪急電鉄・南海電鉄を接続したルートを検討している。しかし、四つ橋線関連の報道はここで終わる。大阪市は市営地下鉄の民営化を目指しており、新線建設によって地下鉄の負担を増やしたくないとも考えられる。

 市営地下鉄民営化の影響で、四つ橋線延伸を念頭に置いた阪急新大阪連絡線構想ははしごを外された形になってしまった。これが阪急電鉄が次の一手としてなにわ筋線接続を図る理由とも言えそうだ。既存路線と直通できない計画は意外だったけれど、四つ橋線規格を検討した経緯を考えれば納得できる。

“阪急新大阪連絡線”は阪急京都本線の淡路駅から分岐し、新大阪経由で阪急宝塚線に合流して十三、さらには梅田に至るルート。阪急神戸本線に合流して神崎川から神戸方面に直通する構想もあった。現在は新大阪〜十三のみ免許が残る “阪急新大阪連絡線”は阪急京都本線の淡路駅から分岐し、新大阪経由で阪急宝塚線に合流して十三、さらには梅田に至るルート。阪急神戸本線に合流して神崎川から神戸方面に直通する構想もあった。現在は新大阪〜十三のみ免許が残る

 ただし、阪急電鉄にとって、JR在来線・南海電鉄規格の線路を建設する場合は、なにわ筋線に直通させてもらわないと困る。阪急沿線の人々には、十三駅で乗り換えを強いるからだ。これでさらに北梅田で乗り換えとなると、沿線の人々のメリットは薄い。現状でも阪急沿線から新大阪駅までは梅田駅で乗り換え1回、関西国際空港へは梅田と難波で乗り換え2回だ。阪急電鉄としては、乗り換えゼロは諦めても、乗り換え1回は維持したい。

新大阪駅の空中写真で見る阪急電鉄新大阪連絡線用地。黄色の部分が建設用に残された部分で、大きな建物が建っていない。赤丸部分は地下鉄御堂筋線の屋根で、阪急電鉄のホームが上に来ることを想定した跡が見える。淡路方向は免許を返上したため、大きな商業ビルが建っている(出典:国土地理院Webサイトに一部指示線を追加) 新大阪駅の空中写真で見る阪急電鉄新大阪連絡線用地。黄色の部分が建設用に残された部分で、大きな建物が建っていない。赤丸部分は地下鉄御堂筋線の屋根で、阪急電鉄のホームが上に来ることを想定した跡が見える。淡路方向は免許を返上したため、大きな商業ビルが建っている(出典:国土地理院Webサイトに一部指示線を追加

 南海電鉄にとって阪急電鉄の直通は喜ばしいはずだ。北梅田〜新大阪で、JRおおさか東線経由と阪急経由の2ルートを選択できる。新大阪〜関西空港間でJR西日本と南海電鉄の共同運行案に落ち着いたけれど、JR西日本は南海電鉄の乗り入れを快く思っていなかったと報じられている。ならば、北梅田から阪急電鉄に乗り入れて、新大阪駅に直通させたほうがいい。阪急電鉄が専用車両を作らなくても、南海電鉄の車両を貸してもいい。

 これはJR西日本が意地悪をしているというわけではないだろう。JR西日本としては新大阪〜北梅田間でおおさか東線の運行本数も確保したい。なにわ筋線経由で阪和線との直通にも魅力を感じているはずだ。新幹線〜関空の特急だけではなく、通勤列車も確保したいところだ。中之島〜北梅田で主導権を握りたい、南海電鉄には中之島駅で折り返してほしい。そうすれば、北梅田駅のホーム2本、線路4本のうち、2本をおおさか東線の折り返しに使える。

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