キリンビバレッジの飲料自動販売機事業を担うビバレッジバリューベンダーとLINEは4月13日、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用した自販機サービス「Tappiness(タピネス)」を開始した。首都圏と近畿圏から順次展開し、1年後には既存・新規合わせて2万台を見込む。
Tappinessは、スマートフォンとBluetoothで接続する「LINE Beacon(ビーコン)」が取り付けられた自販機。LINEを起動した状態でスマホを自販機にかざすと、簡単に接続が完了。現金、電子マネー決済のほか、「LINE Pay」でも支払いができる。購入するとLINE上でポイントがたまっていき、15ポイント集まれば好きな飲料1本と無料で交換できる。また、LINEを介して「特典チケット」をプレゼントすることもできる。
自販機の名称のTappinessとは、TapとHappinessを組み合わせた造語で、「スマホをタップしてハッピー」というメッセージを込めているという。
全国の自販機の台数は約220万台で、20年前の210万台からほぼ横ばいの状態にある。コンビニエンスストアの成長などから、1台当たりの売り上げは下降傾向にある。
自販機業界の二大巨頭は日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナル。3番手争いに参加しているキリンは、15年7月にキリンビバレッジバリューベンダーを設立。同じく中堅のダイドードリンコの提携なども行い、売り上げも自販機の稼働台数も前年増を果たしている。
現在27万3000台を有するキリンの方針は、自販機の専門性と機動性を高めることによる収益性向上と、自販機の魅力向上や他社との差別化だ。1台当たりの売り上げ向上と、ユーザーの囲い込みを目指す。ビーコンの設置や、LINEプラットフォームやLINEのキャラクター利用料などは発生するため(金額は非開示)、設備投資額は小さくはないが、それだけの効果に期待を寄せる。
「自販機という販売チャネルは、ブランドのマーケティングにおいて非常に重要。スーパーやコンビニの棚には制限があるが、自社の自販機に何を入れるかには、ある程度の自由がある。Tappinessによって1台当たりの売り上げを5〜10%ほど向上させたい。売り上げ増につながれば、さらなる拡大も視野に入れる」(キリンビバレッジバリューベンダー岩田実社長)
こうしたスマホアプリを使った取り組みは、日本コカ・コーラの「Coke ON」などの前例がある。キリンは月間利用者6600万人を誇るLINEのプラットフォームを活用することで、自社開発アプリの課題である「ダウンロードの面倒さ」を解決。消費者にとっての気軽さをアピールする。
「幅広い年齢層を自販機の前へと呼びたい。自販機での購入ユーザーの年齢層は全般的に高いので、スマホを積極的に使っている若い方にも使ってもらいたい」(岩田社長)
今後は、キリングループが既に利用している「LINEビジネスコネクト」を使い、Tappinessのデータを用いたワントゥワンマーケティングも視野に入れる。顧客属性や商品の売り上げ分析を行い、利用者1人1人におすすめの新商品情報やポイント付与などを行うなどの施策を考えているという。
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