鉄道車両のラッピングはどのようにして貼っているの?スピードが出ても剥がれません(1/3 ページ)

» 2017年05月01日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 街中を歩いていると、マーキングフィルム(以下、フィルム)を見る機会がぐーんと増えた。フィルムとは看板のデザインなどに使われるシート材のこと。以前はペンキを使って塗装しているケースが多かったが、フィルムはいわば“シール”のように手軽に貼ったり、剥がしたりすることができるので、一気に広がったのだ。

 「え、そんなに増えているの? 実感がないなあ」と思われた人は、「駅」をじっくり見ていただきたい。運賃表、乗り換えの案内、トイレの標識――。このほかにも、床に書かれている停車位置、エスカレーターの手すりなど、さまざまなところでフィルムが使われているのだ。

 フィルムが使われているのは「駅ナカ」だけではない。鉄道車両にも使われている。車体を丸ごとラッピングしたり、広告用に一部をデザインしたり。看板にフィルムを貼る作業はなんとなく想像できるが、大きな車両にどのようにして貼っているのか。また走行していて、剥がれたりしないのか。そこで、山手線の新型車両にラッピングを手掛けたスリーエム ジャパンの竹花泉さんに話を聞いた。

新型山手線E235系の外装もラッピング(出典:JR東日本)

フィルムのメリット

――フィルム事業はどういったきっかけで始めたのでしょうか?

竹花: もともとは米国の本社で、塗装に代わる商材としてフィルムを開発しました。第二次世界大戦ごろの戦闘機には米国の星条旗がペンキなどで描かれていたそうですが、星のマークって細かいですよね。塗装よりもフィルムのほうがいいのでは、ということで商品化が実現したと聞いています。

 そして、60年ほど前、日本はフィルムを輸入しました。当時の看板などは塗装で仕上げていましたが、フィルムは耐久性に優れているほか、短期間で完成することができる、メンテナンスがしやすい、といったメリットがあったので徐々に増えていきました。

 鉄道市場には1970年代に、広がりました。現在のラッピング車両のような用途ではなく、号車番号や車両番号、グリーン車マークなどに使われました。先ほども申し上げましたが、フィルムは耐久性に優れているほか、短時間で作業ができる、メンテナンスの負担が少ない、といったメリットがあるので車両にも広がっていきました。昔は単純なデザインが多かったのですが、いまは複雑なものが増えてきました。例えば、グラデーションを施す場合、塗装で表現するのは難しい。といった事情があって、フィルムを使う車両が増えてきました。

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