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» 2017年05月19日 07時00分 公開

東海道貨物支線の旅客列車運行計画はどうなった?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

[杉山淳一,ITmedia]

費用と便益比は交通政策審議会が出していた

 東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会は、2000年の答申18号を受けて結成された。ただし、その前身の「東海道貨物支線貨客併用化推進協議会」の結成は1998年だ。答申18号のリスト入りは、推進協議会の努力の結果といえそうだ。しかし、推進協議会から数えて19年、いまだに実現に向けた大きな動きはなく、建設費概算もない。

 協議会事務局は検討ルートの費用を明らかにしていない。しかし、交通政策審議会は、答申198号のフォローアップとして、2016年7月に「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」を公開している。その中で、東海道貨物支線貨客併用化の総事業費用は5500億円と算出された。開業した場合の費用便益比は0.3。投資効果があるとされる1.0には遠く及ばない。

 1日1キロ当たりの利用者数を示す輸送密度(平均通過人員)の予測は約3万人で、JR相模線全区間の2.8万人(15年JR東日本資料より)を少し上回る程度。この数字は東京近郊の通勤路線としてはかなり低い。JR相模線は神奈川県県土整備局都市部交通企画課が将来の複線化に向けて利用促進に取り組んでいる路線だ。5500億円をかけて整備しても、利用促進に取り組まなければならない路線程度の利用者数である。

 協議会事務局は「将来的に必要な路線という認識はある」という。年1回の協議会開催、現地視察会、パンフレット製作など、活動は存続している。パンフレットは検討ルート沿線企業などに配布されている。

 協議会事務局のある神奈川県県土整備局都市部交通企画課は、リニア中央新幹線県内駅、相模鉄道・東急電鉄・JR東日本を直通する神奈川東部方面線、相模線複線化など、他にも案件を抱えている。小田急多摩線の上溝延伸では、相模原市と町田市が事務局となっている「小田急多摩線延伸に関する関係者会議」に県も構成員として参加している。

 これらの案件も抱える中で、東海道貨物支線貨客併用化を推進するために何が必要かといえば、“沿線からの要望”に尽きる。特区に参画する企業、みなとみらいをはじめ臨海地区にある旧国鉄所有地の再開発関係者や、企業撤退後の大型マンションの住民などの「鉄道が必要だ」という声が構想の後押しになる。協議会としては、「機が熟すまで地道に活動を維持する」という考えのようだ。もし、鉄道事業者がこの地域の旅客輸送を希望したとき「準備はできています」と言える環境作りも重要だ。

photo 答申198号で検討されたルートの検討結果(出典:国土交通省「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」

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