東海道貨物支線の旅客列車運行計画はどうなった?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2017年05月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

パンフレットの変更点は“重要度の強調”

 3月末に更新されたパンフレットの新要素は2つ。1つは前述の答申198号を反映した。もう1つは、11年に指定された「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」の記載だ。規制の特例措置や税制・財政・金融上の支援措置などをパッケージ化して実施する「総合特区制度」で指定された地域である。検討ルート上には特区の拠点が6カ所あり、パンフレットの地図に明示、各拠点の紹介が記載されている。

 協議会によると、貨客併用化のメリットは4つある。「京浜臨海部の活性化」「東京−川崎−横浜を結ぶ新鉄道ネットワーク」「既存線の混雑緩和」「環境改善」だ。答申198号もこの4点を評価してリストに盛り込んだと思われる。

 総合特区の指定は「京浜臨海部の活性化」の部分を後押しする。「新鉄道ネットワーク」は東京・川崎・横浜の臨海部で、旅客駅の空白地帯を埋め、みなとみらい地区とお台場を結ぶ。品川でリニア新幹線、天空橋で羽田空港方面と接続できる。

 「既存線の混雑緩和」は、横浜〜東京間の東海道本線、横須賀線、京浜東北線、京急電鉄線を迂回するルートの設定によって、それぞれの路線の混雑緩和を狙う。記載されていないが、筆者の実感として、東海道本線と京浜東北線の川崎〜品川間は東京都大田区と品川区の踏切障害が多発し、信頼性が低い。踏切道改良促進法による国土交通大臣の指定もなく、立体交差化は未定だ。東海道本線と京浜東北線の踏切障害によって、立体交差化された京急電鉄も影響を受けて遅延する。東海道貨物支線は迂回路として機能しそうだ。

 「環境改善」は、自動車利用から鉄道利用に転換することで、CO2削減を狙う。ただし、この部分の効果はきちんとした調査が必要と思われる。例えば、川崎市の産業道路の渋滞要因は大型トラックやトレーラーなど、加速度の低い大型貨物車に起因している。自動車通勤者も少なくないと思われるが、もともと渋滞しているため、マイカーより既存の電車とバスを組み合わせる利用者が多そうだ。環境改善をいうなら、大型貨物車を貨物列車にモーダルシフトさせるべきで、旅客列車の導入は貨物列車の増発を妨げかねない。

photo 京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区には17拠点が指定されている(出典:京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区公式サイト

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