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早稲田ラグビー元監督が明かす、失敗リーダーの典型とは?中竹竜二氏×サイバー役員・曽山哲人氏対談(3/6 ページ)

» 2017年06月08日 06時30分 公開
[伏見学ITmedia]

――早稲田の監督になったとき、最初にどういう目標設定をされたのですか? その前の早稲田は、清宮克幸監督率いる黄金時代だったわけですが。

中竹: 僕は一度も指導したことがなかったので、目標設定の仕方が分かりませんでした。何となく「優勝」と言わないといけないかな程度。ただ、初めに選手たちには「俺は指導できないし、期待しても駄目だから、自分たちで考えてね」と伝えました。そこからスタートしたのです。

 すると誤算だったのは、選手たちは今まで強烈なトップダウンのリーダーに引っ張られてきたので、自分たちでそうした物事を考える習慣がなかったのです。

 「考えろってなんですか? 僕らはあなたが考えたことをやり切るだけなので、早くアイデアを出してくださいよ!」と喰いかかってくるのです。

 それに対して、こちらも「いや、考えるのはお前たちで、俺はサポートする役割だから」と突き返します。そんなやり取りが繰り返されました。

 結局、考えたことのない人に、考えろと言っても無理なんですね。そこで初年度は、ラグビーの練習を頑張ったよりも、考えるトレーニングや話し合うことに力を入れました。

猛者ぞろいの早稲田ラグビー部を、中竹氏はどうやってマネジメントしていったのだろうか?(写真はイメージです) 猛者ぞろいの早稲田ラグビー部を、中竹氏はどうやってマネジメントしていったのだろうか?(写真はイメージです)

――もう少し具体的に教えてください。考えさせるためにどのようなことをやったのですか?

中竹: メンバー全員との個人面談を年に数回やりました。さらに1年間の目標や自分の強み、こだわりなどを記述するシートを用意して、きちんと事前に埋めてから面談に臨むようにさせました。また、レギュラー選手には毎試合後に別途面談していました。

 ミーティングにも力を入れました。ミーティング前、チームリーダーたちに次の試合のテーマ、例えば、攻撃と防御のテーマの名称だったり、ゲームプランだったりを考えさせておいて、それに対して僕が質問を投げ掛けるようにしました。

 ただ、こうした活動の中で失敗したと思ったのは、どんなチームを作りたいか、あるいは、どうやって勝ちたいかなど、最も大きなテーマをいきなり考えさせては駄目だなということです。

曽山: 正解が出てこないですよね。

中竹: 出てこないし、選手たちの中でも考えはバラバラで、ぶつかってしまいます。

曽山: 余計な調整コストが増えるだけですね。

中竹: 考えろと言っても無理なのですが、一応、「お前たちも考えるようになったね」と承認しながらおぜん立てして、彼らに自己肯定感を味わせていました。けれども、そんなのは当然のように中途半端なので、結局、選手権の決勝戦で負けてしまったのです。

 それが1年目で分かったので、大きなテーマは僕が決めるべきだと、2年目はそうしました。

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