――どのように変えたのでしょうか?
中竹: ゴールはこちらで定義するとともに、ただ優勝を目指すと言うのではなく、前年の決勝で負けた関東学院大学を相手に「50対0で勝って優勝」すると、目標を具体化しました。新チームが発足した現時点で試合しても0対50で負けるから、シーズンかけてこの100点差を埋めていこうと伝えました。
曽山: なるほど、この成果定義はいいですね。単に優勝しようだけではなくて、50対0で優勝しようと。
中竹: 前年はとにかく優勝しようとだけ言っていました。すると何が起きるかというと、決勝戦前日も、当日のハーフタイムも、「とにかく1点差でもいいから勝とう」となるのです。1点差なんてちょっとしたことですぐにひっくり返るのです。
そこで2年目には「俺たちは50対0で勝つのだから、決勝前日にはどんな状況にあっても50対0で勝つための練習を終えておかねばならない」とはっきり言いました。
そこから逆算して、夏合宿を終えたあたりで20対0に持っていかないといけない。すると春の時点では10対0になっているべきだ。今は0対50だから、あと3カ月で60点差を埋めなければならない。そのためにはこれだけの練習が必要だ、という具合です。
ところが、そうした話をシーズン最初のミーティングで選手にしたところ、1カ月前に大敗している相手に、しかも先輩たちが抜けて弱くなっているのに50対0で優勝するなんて、「こいつ、やっぱり何も分かってないな」とドン引きされました。
そこで、なぜ50対0と目標設定したのかを理論的に説明しました。ラグビーではけが人や悪天候、ミスジャッジなど試合で起こり得る5つのマイナス要素があると考え、これにそれぞれ10点をかけて50点としました。これだけの差があれば、たとえ試合当日に何かが起きても絶対に負けないと考えたのです。実際、前年はそのうちのいくつかの要素で負けたのです。
そして、50対0で勝つための中身はお前たちに任せるので、あとは自分たちでどうやるかを考えてねと言いました。シーズン初日のことです。
曽山: 良い目標が決まったら、それは達成したも同然ですね。
中竹: このように最初は皆ドン引きしていたのに、そのシーズンの決勝前日、選手たちから「明日は50対0で勝つから、胴上げしてあげるよ」と言われました。それがすごく嬉しかったです。
強い組織や成果を出す組織を作りたいとは皆思っているが、どう成果を決めるかというのは意外と多くの人がやっていないことなのです。
曽山: 単に優勝と言って終わった監督と、50対0で優勝と言い変えた監督との間には、天と地の差があると思います。この間には何が足りないのでしょうか? ビジュアル化する力なのか、具体化する力なのか。
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