東京圏主要区間「混雑率200%未満」のウソ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2017年08月18日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

実態と離れた「混雑率」で対策してはいけない

 私が通勤していた1996年ごろに、都内の通勤電車の混雑率は200%台におさまった。最新のデータは最混雑区間の地下鉄東西線で199%。国交省は引き続き、混雑率180%以下を掲げている。ただし特定都市鉄道整備促進特別措置法の新規認定区間はなく、鉄道事業者の努力に頼っている現状だ。交通政策審議会の答申198号も混雑対策を強く打ち出してはいない。

 かつては混雑率300%超だった。しかし、ハード面の解決方法では200%以下までが限界。ここから先はハード面の対策ではなく、利用者の努力も必要ではないか。そこで始まったキャンペーンが、東京都が推進する「時差Biz」である。朝早く出勤して、混雑を分散させましょう、というわけだ。朝の上り線に座席指定列車を走らせたり、早朝利用者にポイントや景品を提供したりと、早朝利用者に餌をまく。

 断言しよう。これでは朝の混雑は解消しない。夕方の混雑は対策されていないから、もちろん解消しない。この施策自体は有効だけど、時期尚早だ。朝の混雑をナメているとしか思えない。東京圏の鉄道の混雑は、まだ、気持ちで解決できる段階ではない。

 なぜなら、国土交通省が発表する「混雑率」自体が怪しい数字だからだ。通勤電車に乗ってみれば分かる。最高の混雑率が200%未満なんて真っ赤なウソだ。混雑率200%は「体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める」だという。週刊誌なんか読めるか。スマホの画面さえ見づらいくらいだ。私は老眼が始まっているから、顔とスマホの間を離したい。それも無理だ。

photo 混雑率の目安。新聞や週刊誌の基準で現状を把握できるか(出典:国土交通省

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