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» 2017年08月29日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:だから、なんども「炎上CM」がつくられていく (4/6)

[窪田順生,ITmedia]

日本のおじさんならではの発想

 このコラムでも何度か紹介した安冨歩氏という人物がいる。住友銀行の行員から、気鋭の経済学者へと転身した後、現在は「女性装の東大教授」として注目を集め、さまざまな言論活動を展開している。

 その安冨氏が「日本の男性が生きづらい理由」を『現代ビジネス』のインタビューのなかで述べているのだが、日本の「おじさん社会」の問題を端的に言いあわらしている。少し長いが引用させていただく。

 『日本は戦時中の軍国主義のマインドのままで、表面だけ民主主義に変わっちゃったからね、精神は復員できていない。女は銃後、男は戦場。その証拠に、日本の社会って、基本的にホモマゾ(ホモソーシャルでマゾヒスティック)じゃない。たとえば会社組織って、おっさんが集まっていちゃいちゃしてるでしょ、昼も夜も休日も。ずっと一緒にいて、それでいて集団マゾなの。一緒に我慢しようね、みたいな。つまりは『貴様と俺とは同期の桜』っていう日本軍のモードのままなのよ。表面上は自由で豊かでも、腹の中は、いまだに戦時中なわけ。酒飲んで、一瞬だけプレッシャーを忘れて、また元のホモマゾの中に戻って、の繰り返し。だから日本人の男はこんなに生きづらい』(2016年1月28日 現代ビジネス)

 CMをご覧になった方も分かると思うが、女性たちに匂いをクンクンされるイケメンは嫌がるわけでもなく、怒るわけでもなく、じっと目をつぶって耐え忍んでいる。同じく花王の「リセッシュ」のCMでも、大島優子さんに、スーツの臭さを指摘された男性はしゅんとうなだれる。

 まるで「プレイ」のように見える「辱め」にもじっと我慢をする自虐的CMは、「ホモマゾ社会」ならではの発想である。

 思い当たる方も多いだろうが、世のおじさんたちは、「ムラ」のなかのマイノリティである女性に対して無神経な言動を繰り返す一方で、自分がいかに家庭内で虐げられているのか、会社内で板挟みになっているのかというような「自虐ネタ」は好む。

 「ウォータースタンド」のように、CMに登場する「おじさん」の多くが、お約束のように奥さんや子どもたちから疎(うと)まれる存在として描かれているのは、この「ホモマゾ気質」からなのだ。

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