9階建ても登場 都心で多層階の家を仕掛けるパナホームその狙いは?(4/4 ページ)

» 2017年08月31日 06時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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 パナホームは、「上へ、上へ、ビューノ」を、マーケティングメッセージとして、多層階事業を展開。16年度実績では年間900棟、800億円を受注。17年度には年間1000棟、900億円、18年度には1100棟以上を目標とし、年間1000億円の売上高を目指す計画だ。

現在、東京、名古屋、大阪など全国11拠点でピューノプラザを展開。これらの拠点を通じて、多層階のコンサルティングサービスを提供している。

 パナホーム 東京東支社の赤羽潤支社長は「台東区、千代田区、墨田区、中央区などの高層エリアでは4〜9階を主力にし、併用住宅や非住宅を提案。また、北区、文京区、豊島区、荒川区、江東区の中高層エリアでは3、4階建て住宅を主力に据え、住宅専用や賃貸住宅、併用住宅を展開する。そして、葛飾区、江戸川区、足立区、板橋区の中低層エリアでは、Vieuno3E を含む2、3階建て住宅を提案し、住宅専用や賃貸メインでの展開を行う。エリアに応じた商品提案によりシェア拡大を見込む」と強調する。

 また、パナホーム 大阪支社の武田悟支社長は「大阪市内は、ほとんどの地域が建ぺい率が80%であり、容積率が200%以上となっている。また、東京都とは異なり、高度斜線規制がないため、3階建て住宅を建てやすい環境にある。特に環状線の内側は、容積率が300〜1000%となっており、4階建て以上も建てやすく、9階建てまでの製品を持つパナホームの特徴を打ち出しやすい」と話す。

 パナホームでは7月1日に高層階エリアと位置付ける東京・墨田区(錦糸町)に日本初となる7階建て住居のモデルハウスをオープン。さらに7月22日には、環状線内となる大阪・難波に、5階建ての店舗、賃貸ルーム付き二世帯住宅のモデルハウスをオープンした。

二世帯住居の親世帯のために和室も用意 二世帯住居の親世帯のために和室も用意

 東京・錦糸町のモデルハウスでは、7月17日までの約半月で来場が356件。そのうち193件が新たな顧客だという。また、大阪・難波のモデルハウスは、「7月15日からの3連休にプレオープンしたところ、3日間で、1カ月分の来場予定数に達した」(武田氏)という注目ぶりだ。

 錦糸町の住宅展示場にオープンしたモデルハウスでは、1階および2階を店舗フロア、3階がオフィス向け賃貸フロア、4階が住居向け賃貸フロアを2室、5〜7階を自宅フロアとしており、総事業費は約3億円。店舗フロアの家賃収入が、2フロアそれぞれで30万円、オフィスで30万円、住居向け賃貸が15万円で2室を想定し、合計で月120万円を想定。月90万円の返済と、エレベーターなどの運用費、税金などを含めても、自己資金なしで建築できる計算になっているという。

 「都会の空き地は、あなたの家の『上』にある」というのが、パナホームの多層階事業のコンセプト。都心部では、多層階住宅への関心はますます高まりそうだ。

著者プロフィール

大河原克行(おおかわら かつゆき)

1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。

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