乗り鉄にチャンス!賞金5万「鉄旅オブザイヤー」一般部門杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2017年09月01日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

個人ではできない、旅行会社ならではの旅

 「鉄旅オブザイヤー」一般部門に応募するなら、まず「鉄旅オブザイヤー」の趣旨を理解しておこう。

 鉄道を使った旅行は個人で手軽に手配できる。鉄道そのものが目的だと、観光施設めぐりや食事などに凝らないから、旅行会社の特色は出しにくい。メリットがあるとすれば団体割引の適用によるコスト効果くらいだ。

 しかし、費用については、遠距離ツアーで格安航空、近距離ではバスツアーが台頭している。鉄道運賃は大幅な値引き制度が少ないため、料金の提示だけでは勝負しにくい。それだけに、旅行会社の企画力、構成、個人旅行では不可能な観光案件の組み合わせが試される。

 旅行会社の企画担当者にも鉄道好きが多く、近年の鉄道趣味の盛り上がりに呼応する形で、旅行会社ならではの鉄道旅行企画が作られている。しかし、なかなか認知されない。そこで旅行業界団体とJR旅客系各社、日本民営鉄道協会などが後押しする形で「鉄旅オブザイヤー」が創設された。

 歴代の受賞作品を見ると、旅行会社の奮闘ぶりがよく分かる。11年のグランプリは「怪奇!!トロッコ列車 京都保津川2時間サスペンス」と題して、嵯峨野トロッコ列車を夜間時間帯に走らせて、怪談話とパフォーマーによる演出が行われたツアーだ。個人では組み立てられない、旅行会社の集客力、交渉力ならではの企画だった。12年のグランプリは美祢線のやきとり列車。車内でやきとりを販売し、主な停車駅でスイーツなども提供する。被災から運行再開した列車を軸に、沿線のおもてなしを盛り込んだ。

 13年はテツ分が高め。引退間近な国鉄急行形電車を貸し切り、往年の北陸本線の急行列車を再現した。14年はJR九州の「ななつ星in九州」からクルーズ船「飛鳥II」へ乗り継ぐ旅。両方の運行日程を把握し、旅行会社の交渉力で実現した。好景気の始まりを象徴するような豪華企画だ。15年は親子を対象とした鉄道の職業体験がテーマ。16年は旅行会社が設計、集客する観光列車だった。

 他の受賞作品を見ても、どれも個人では実行できない企画ばかり。旅行会社の実力を感じさせる。一般公募作品にも、この趣旨は求められる。「それ、1人でできるよね。行っておいで」と思われる旅は評価しにくい。個人ではできない旅。旅行会社ならやってくれそうな旅を考えよう。それは旅行業界関係者にとって、一般旅行者が企画ツアーに何を期待しているか、という参考にもなる。

photo 2016年度の旅行会社部門受賞作品「日本海絶景トレイン『きらきらうえつ号』に乗る月山・鳥海山3つの絶景遊覧 3日間」から。旅行会社が集客を約束することで、地域のおもてなしイベントを実施できる。参加者には個人旅行でできない体験となる

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