米フィンテックのシンフォニー 日本進出への期待CEOに聞く(1/2 ページ)

» 2017年09月11日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 金融機関向けコミュニケーションツールを提供する米Symphony Communication Services(以下シンフォニー)は、日本の事業展開を本格化する。同社のメッセージサービス「Symphony」は、米国を中心に約200社が導入。利用者数は約23万人に上る。セキュリティを高め、社内外で機密性の高い情報を扱う金融機関に適した仕様にしている。サービスの特徴と日本展開の方針について、CEOのダービッド・グーレ(David Gurle)氏に聞いた。

photo シンフォニーが提供するコミュニケーションツール「Symphony」の画面イメージ。メッセージ交換やグループチャット、ファイルの共有などができる

――なぜ金融業界向けのメッセージサービスが必要だったのですか。

 シンフォニーは、米ゴールドマン・サックスやバンク・オブ・アメリカ、野村ホールディングスなど、14の金融機関の出資によって、2014年10月に設立しました。現在、出資機関は20に増えています。

 金融業界は、“情報”が非常に重要な業界です。世界経済、市場、企業の動向など、社内外で共有、交換したデータに基づいて商品開発などの意思決定をします。組織内や社外、グループ内、1対1など、さまざまな形態で情報を伝達する必要があります。

 加えて、さまざまな業界と関わるハブの役割を担っており、セキュリティやコンプライアンスが重要な業界です。そのため、国防に次ぐぐらいの厳しい審査が必要で、各国で厳しい規制があります。規制に適合し、セキュリティが高いシステムの需要があったのです。

photo シンフォニーCEOのダービッド・グーレ氏

――ビジネス用コミュニケーションツールは他にもたくさんありますが、Symphonyは何が特徴なのですか。

 セキュリティが大きな強みです。End-to-End Encryption(エンドツーエンドの暗号化)という処理方式を採用しており、暗号化キーは顧客が所有します。自分の家に鍵を使って入るように、自分のデータの鍵を自分で持つイメージです。他からアクセスすることはできません。また、金融サービスに関する各国の規制をクリアできるプラットフォームになっています。

 もう1つの強みが、オープンプラットフォームです。チャット会話中に文脈を読み取り、外部から関連するコンテンツを自動で探して表示することができます。例えば、ある企業に関する投資の話題が出たとすると、その企業名、投資、機会といったキーワードで、インターネット上や社内データから情報を引っ張ってきます。会話を中断してリサーチする必要がなくなり、意思決定までの時間を短縮することができます。

 現時点では、事前にキーワード設定をする必要がありますが、人工知能(AI)によるディープラーニングの活用も見据えています。過去の会話を学習して、自動で情報を探すことを想定できます。

――現在の顧客はどのような企業ですか。

 約200社、23万ライセンスのうち、45%が米国の利用者です。アジアは15%です。日本でも数千のライセンスが利用されていますが、最大規模の野村證券を除くと、ほとんどが外資系企業の日本法人です。グローバルの金融機関でホールセール(法人向け)の業務を行う部門が主な顧客です。

 アジアでは、香港の投資会社CLSAで採用が決まり、東京を含むアジア全拠点で導入されることになりました。これを皮切りに、本格的に日本をはじめとするアジアへの進出を考えています。

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