なぜ「トクホ」はシニアよりも若者に人気なのかスピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2017年10月31日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

若い世代の「トクホ人気」はどこからきた?

 まず1つ目は、若い世代に「トクホ」を訴求する新商品の登場だ。実はこの調査が実施された4カ月前、コカ・コーラのラインアップでは初となるトクホ製品「コカ・コーラプラス」を発売、それまでトクホコーラカテゴリーの代表格だったキリンの「メッツコーラ」もリニューアルしている。これらトクホコーラからエントリーした若い世代が、他のトクホ製品も買い求めてファンになったというのは十分に考えられる。

photo 「コカ・コーラプラス」

 2つ目は、若い世代に訴える「トクホCM」の影響だ。その代表が、若い女性から人気のモデル、ミランダ・カーさんを起用している「黒烏龍茶」のCMだ。2015年3月からオンエアされたCMでは、ミランダさんがトンカツやらをバクバク食べるというもので、昨年12月からのCMでは、日本語をまじえながら「脂マネジメント」なる新習慣をプレゼンしている。

 ミランダさんは若い女性に人気のブランド「サマンサ・タバサ」のイメージキャラクターを務めていたことで知られている。このような若い世代への影響力が強いファッションアイコンが2年もの間、テレビに繰り返し登場して「トクホ」を連呼すれば、社会に浸透しないわけがない。

photo 「黒烏龍茶」のCMに起用されているミランダ・カーさん

 だが、このようなマーケティングの成果もさることながら、実はこれらよりも大きな影響を及ぼしたのは3つ目の理由である。

 それは、「朝型社会」だ。

 2016年2月、NHK放送文化研究所が全国の10歳以上の男女計7882人を対象とした「国民生活時間調査」を発表した。それによると、半数以上が午後11時には寝ており、前回の調査(2010年)と比べ就寝時間が早まっているという。また、前回と比べ、平日は午前5時〜7時15分に就寝中の人が減っており、「早起き」の傾向が進んでいるというのだ。この結果を受けて、同研究所はこのように分析をしている。

 「平日夜は40代など働き盛りの世代で早寝が増え、朝も若い世代を含む幅広い年齢層で早起きが増えている。仕事や学校など社会全体が朝型にシフトしつつあるようだ」(日本経済新聞電子版2016年2月18日)

 実はこれも先ほどと同様にちゃんと理由がある。この調査がおこなわれた2015年10月の3カ月前、政府は日本版サマータイムの導入を目指して、全省庁で「朝型勤務」を呼びかけたのだ。

 「朝型社会」へシフトしているということは当然、始業時間前に出社して、仕事をしたりという「朝型ビジネスマン」も増える。そこにくわえて、先ほどのように「トクホ」を連呼する新製品やテレビCMが流れる。理屈で考えれば、「朝トクホ」という習慣が定着していくというのも当然である。

 Apple、ナイキ、スターバックスなど、世界的企業のCEOは「朝型」が多い。生産性向上が喫緊の課題となっている日本において、「朝トクホ」が普及して、このような社会へシフトしていること自体は悪いことではない、と思う。

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