つまり、「朝型社会」へシフトすればするほど、「夜型社会」を支えてきたビジネスが衰退するのは、避けることのできない自然の摂理のようなものなのだ。
そう考えると、「朝トクホ」が若い世代に定着してきたという今回のニュースは、一部の方たちにとっては、軽く聞き流すことのできないヘビーな話といっていい。本格的に日本社会が「朝型」に変わっていく前兆かもしれないからだ。
もちろん、世の中からいきなり居酒屋などが消えてなくなることなどありえない。特に最近では、訪日外国人観光客の「夜遊び消費」の受け皿がないということで、クラブやバーなどの整備がすすめられている。社会というものは、どこかでバランスをとるはずなので、何でもかんでも「朝型」になるわけがない。
ただ、1つだけ断言できるのは、これまでのような感覚ではやってられないということだ。
これまでの日本社会は、朝から晩までみっちり働いて、晩に仕事が終わると今度は上司や同僚、取引先と「仕事のつきあい」をするのが当たり前であり、その常識が居酒屋を代表する「夜型社会」を支えてきた。
だが、そんなビジネスモデルも、若い世代が「朝型」になると加速度的に崩壊していく恐れがあるのだ。
「朝トクホ」なんてサントリーがトクホを売るためにつくった宣伝文句でしょ、と思う方も多いかもしれないが、実はそんなにバカにできない話なのかもしれない。
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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