なぜ「トクホ」はシニアよりも若者に人気なのかスピン経済の歩き方(3/4 ページ)

» 2017年10月31日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「夜型社会」の崩壊

 ただ、その一方で今のように「朝型社会」への急激な移行は「過渡期」ならではという、さまざまな問題も引き起こすのではないかという懸念もある。その代表的なものが、「夜型社会」の崩壊である。

 実は先ほどのNHK放送文化研究所の調査によると、働く人のなかで、「仕事のつきあい」をしている人の率が、1995年の10%から比較して6%に減少。中でも、販売職・サービス職、事務職・技術職、経営者・管理職などは半分の水準になっている。

 要するに、この20年でビジネスパーソンの「飲みニケーション」がガクンと減少している。

 日本フードサービス協会が毎年、協会会員社による外食産業市場動向調査を公表しているのが、それによると「ファストフード」「ファミリーレストラン」などが好調に推移していることと対照的に、「パブレストラン・居酒屋」がこの数年は前年比マイナスが続いている。

photo 仕事の付き合いで飲む人は減ってきている

 そのスタートを振り返っていくと、売り上げ金額前年比は2009年、利用客数前年比が2008年。ちなみに、このタイミングというのは、先の「健康と飲料レポート2017」の中にあるトクホ飲料市場(富士経済「H・Bフーズマーケティング便覧」から抜粋)によると、600億円を突破したタイミングである。トクホ飲料という健康課題を解決しようという商品の普及と、「外飲み」の減少というものは表裏一体というか、微妙にリンクしている可能性があるのだ。

 といっても、これは冷静に考えてみれば、当然の話である。ビジネスをしている側の立場からすれば、トクホ市場も右肩あがりで、外食産業も右肩あがりという都合のいいことを考えるが、銭金の問題ではなく、実際に消費をするのは、血の通った「人間」だということを忘れてはいけない。

 早起きをして朝活だなんだとやれば当然、夜は眠くなる。体脂肪や血圧を気にしてトクホを飲むようになれば当然、「今夜はオールだぜ!」なんて若い時のようにハッスルすることも控えるようになる。

 女性の社会進出が進む一方で、「男性不況」(マン・リセッション)が起きているという現実問題があることからも分かるように、人口という総数が増えない以上は、どこが出ると、どこかが引っ込むのは当然だ。

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