また、商圏特性に合わせたテナントいう意味では、メガネ屋が3店舗(ゾフ、スペックス、金子眼鏡店)も同じビルに出店しているのは珍しい構成です。これだけ全体の店舗数が少ない中で3店舗もメガネ屋があるというのは、高齢者も多く来店が見込まれるため需要があると想定したのでしょう。ターゲットによって使い分けることができ、顧客思考の構成だと思います。
パルコの売り場ではありませんが、地下1階の松坂屋が展開する婦人靴フロアはコンフォートシューズに特化した売場として興味深いフロアです。
ヒールの高い靴がほとんどないコンフォートシューズに特化した売場
導線も広く、もちろん甘味処もある婦人靴フロアは従来の松坂屋顧客にも新たな客層にも支持される売り場になりそうだと感じました。
地元住民に親しまれている松坂屋上野店に加え、パルコヤが大人を狙うことで、従来の松坂屋南館では集客しきれなかった新しい顧客層を取り込むことができるはずです。上野動物園のパンダの赤ちゃんのシャンシャンが公開になれば、予想以上のお客さんが流れてきて、上野松坂屋およびパルコヤは繁盛店になる可能性を秘めています。
松坂屋はこの地で250年にわたって商売をしています。その松坂屋がここまで同じ地で商売を続けてこられたのは、常に商売を時流に合わせて変化させてきたからにほかなりません。その時々の大衆の気持ちに寄り添い、お客さんに喜んでもらえる店づくりをしてきたからこそ、250年続けてくることができたわけです。
今回の新たな取り組みは次の250年に向けた再スタートのための取り組みです。そのためにはパルコという革新が必要だったわけです。そして、パルコそのものにも革新が求められました。その結果が今回の新たな取り組みとなっています。
この狙いが的を射ていれば、松坂屋とパルコヤ合わせて500億円以上の売り上げになるかもしれません。同グループのエース店舗になれるかどうか、今後も注目したいと思います。
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
株式会社 船井総合研究所 上席コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。ファッションを専門分野とした流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。百貨店の営業戦略および全社MD戦略立案、GMSの売場再構築、大手メーカーの新規ブランド開発、SPA型小売業の事業戦略策定、中小専門店の現場支援コンサルティングなどを通じ、各業界で注目を集めるグレートカンパニーを数多く輩出させている。街歩きと店歩きによる消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
丸の内で働く情熱コンサルタントのブログ
- 日本でも変わりつつある食品スーパーの常識
日本の食品スーパーマーケット業界が転換期に差し掛かっています。今や単に食品を販売するだけでは消費者も物足りなくなり始め、新たな業態に変革しなければならない時代に突入しました。その切り口の1つが「グローサラント」です。どのようなものでしょうか?
- ギンザ シックスが「規格外」である理由
東京・銀座6丁目にオープンしたばかりの「GINZA SIX(ギンザ シックス)」。さっそく大行列ができるなど、早くも人気の商業施設になりそうです。実はギンザ シックスにはほかの商業施設にはない特徴がいくつかあるのです。
- くるぶしオヤジの登場も近い? ファッションと働き方改革の関係
日本の暑い夏に働くビジネスパーソンの間で「クールビズ」という考え方はすっかり定着しました。そんな中でクールビズファッションはさらに進化し、くるぶしを出すスタイルが今注目されています。
- 新商業施設「中目黒高架下」の“新時代感”
11月22日、中目黒駅の高架下に新たな商業施設「中目黒高架下」がグランドオープンしました。このところ盛り上がりを見せている「ナカメ」に誕生したこのショッピングセンターは一体どんな特徴があるのでしょうか?
- 小売業の未来を米ロボットレストランに見た
今、米国・サンフランシスコで人気のある、ビジネスマンなどにサラダを売るファストフード店をご存じでしょうか? 実は「ロボットレストラン」として話題を集めているのです。ここから日本の小売業の未来が見えてきました。
- ランドセルがじわじわと値上がりしている理由
平均単価は約5万円、中には15万円を超えるランドセルも。数年前から小学生向けランドセルの高価格化が進んでいます。そしてまた、値段が高くても売れているのです。その背景にはどのような消費トレンドがあるのでしょうか。
- 無名な店ばかりなのに、客が集まる商業施設が浅草にあった
消費者の目が厳しくなった今、単に安くて良いものが買えるというだけでは繁盛店にはなりません。そうした中、昨年12月に開業したばかりの東京・浅草の商業施設は、なぜ連日のように大勢の人たちで賑わっているのでしょうか。その理由を探ります。
- 年内に100店舗を計画 「相席屋」が事業を急拡大している理由
最近、繁華街で居酒屋チェーン「相席屋」の看板を見る機会が増えていないだろうか。2014年に1号店をオープンして以来、破竹の勢いで右肩上がりに売り上げや店舗数を伸ばしているのだ。さらには「マッチング」をキーワードに新たなサービスにも乗り出した。同社の取り組みに迫る。
- 本が売れない時代に本を置く異業種店が増えているのはなぜ?
出版不況が叫ばれて久しいですが、昨今、店に本を置くアパレルショップや雑貨屋、カフェなどが増えています。そして、それらは共通して繁盛しているというのです。その理由を探ります。
- 売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由
皆さんの会社には「オフィスグリコ」はあるだろうか? 江崎グリコがこのサービスを本格展開し始めてから十数年のうちに売上高は17倍以上の53億円に。その成功の秘密に迫った。
- “不毛時代”続いたカルビー「フルグラ」がなぜ急激に売れ出したのか?
カルビーが8期連続で過去最高益更新と絶好調だ。その業績を支える柱の1つがシリアル食品「フルグラ」である。この数年間で急成長を遂げており、2018年度ごろには500億円の年間売り上げを見込む。しかし以前は低迷期が長らく続いていた商品なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.