島原鉄道の事業再生支援が決定 地域再生の総力戦が始まる杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2017年11月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

次は経営改革、「上下分離」も要検討

 島原鉄道にとって、このままの状態で事業を継続し、最後に上下分離化で落ち着くという選択肢もあっただろう。しかし、この時期に事業再生を決心した背景には、長崎に訪れたチャンスをチカラに変えたいという意思があったといえる。じり貧で行き詰まるより、明るい未来を迎えるために手を打ったほうがいい。

 再生支援によって、島原鉄道は長崎自動車と地域経済活性化支援機構に総額1億8000万円の第三者割当増資を行う。これで長崎自動車と地域経済活性化支援機構は議決権の90%以上を得る。また、取引銀行は債権の大部分を放棄する。貸した金が返ってこないわけで大損になるけれども、実は不良債権の解消は経費として処理でき税金面で利点もある。自己資本率も上がるため、銀行業の価値向上策として悪い話ではない。

 何よりも、今後も島原鉄道が継続すれば、放棄しなかった債権は回収できる。再生が成功すれば、新たな優良取引先になるだろう。長い目で見れば大きな損にはならないし、むしろ、火傷が広がらないうちに手を打った方がいい、となる。

 島原鉄道は事業再生による支援が決まった。鉄道の存続はどうか。企業は存続したとはいえ、鉄道はその事業部門の1つにすぎない。鉄道があまりにも不振で、長崎自動車が培ってきたバス運行の経験で代替できるなら、鉄道路線廃止も議題に上がるだろう。しかし、その前にやはり鉄道路線の経営合理化は必要だ。経営危機を脱した島原鉄道にとって、やはり上下分離化は検討課題になるだろう。

photo 鉄道存続は決まったが無風になったわけではない、さらなる経営努力は必要(2007年筆者撮影)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.