新商品の「甘さ控えた微糖」のネーミングは、一見すると味をイメージしづらい。「微糖」そのものが甘さを控えた味ではないのだろうか。文章を書く立場からすると、表現が重なっていて、違和感を覚えてしまう。
しかし、「缶コーヒーのユーザーには伝わる表現」と土屋さんは言う。そこには、缶コーヒーの「微糖」にまつわる商品開発の難しさが関係している。
缶コーヒーに「微糖」が登場したのは20年ほど前。健康志向によって、砂糖の取り過ぎを心配する人が多くなり、甘い缶コーヒーにも変化が求められた。それなら、砂糖を減らせばいいかというと、それも簡単ではない。砂糖を減らすと、缶コーヒー独特のコクも失われ、味が薄くなってしまう。飲みごたえがなくなると、ぐいっと飲みたいという需要にも応えられない。
そこで、砂糖を減らす代わりに使われたのが甘味料。砂糖を減らしても甘さやコクを維持できることから、多くの商品がこの方法で作られた。これが「微糖」だ。「微糖といっても、甘いじゃないか」と思ってきた人もたくさんいるだろうが、それは当然。おいしさを変えずに砂糖を減らしたものが、微糖だったのだ。
微糖が缶コーヒーの主流になった現在、土屋さんらは新たなニーズに注目した。それは、「本当に甘さを控えた微糖」へのニーズだ。缶コーヒーのユーザーからは「微糖は甘すぎる」という声があった。そういった人たちには「甘さ控えた微糖」という表現の意図も分かってもらえる。そう考えた。
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